2024年12月22日(日)

Washington Files

2021年2月1日

(Nuthawut Somsuk/gettyimages)

 もともと全米の共和党員数は2017年1月トランプ政権発足以来、下降線をたどりつつあった。

 昨年12月17日、米ギャラップ社が発表した有権者を対象とした党派別調査結果によると、自ら「民主党員」と答えた有権者は全体の31%だったのに対し、「共和党員」はわずか25%にとどまった。「無党派independent」は41%だった。

 「無党派」と回答した有権者に対し、「どちらの党寄りか」を尋ねたところ、「民主党寄り」が50%、「共和党寄り」が39%とさらに差が開いた。

 また、全米50州のうち登録党員数で共和党が民主党を下回る州の数はトランプ政権発足後、増え始め、2017年に3州、2018年に4州と増加傾向にあった。

 こうした傾向がはっきり結果として現れたのが、2020年大統領選挙であり、バイデン民主党候補は現職大統領相手に、全米有権者総得票数で704万票、選挙人数で74人もの差をつけ当選を果たした。共和党は上院での多数支配を失った。

 しかしその後、有権者の共和党離れは、去る1月6日、大統領が扇動教唆した暴徒による議事堂乱入・占拠事件をきっかけにさらに増え始めている。

 ABCテレビは去る1月26日のニュース番組で「1月6日以来、各州のうちとくに民主、共和両党勢力が拮抗する重要州で共和党員の党員登録数減少が目立ってきた」として、以下のような具体的動きを報じた:

  1. ノースカロライナ州では、1/6-1/19の2週間だけで、6000人の共和党員が新たに州選管に「無党派」として登録を済ませ、共和党員530人が民主党に鞍替えした。同期間に、「無党派」登録した民主党員は1210人と5分の1にとどまった。
  2. アリゾナ州では、1月6日以来、7500人が共和党から民主党または「無党派」に登録を変更した。この間、共和党または「無党派」に登録を変更した民主党員は1600人だった。
  3. フロリダ州では、最多人口のMiami-Dade郡だけで、1600人の共和党員が離党した。この間の民主党員の離党は280人だった。
  4. ペンシルバニア州でも同様の動きが出始めており、AP通信が同州Cumberland郡で行った初期調査によると、同郡で共和党から民主党に鞍替えした党員は1月初旬だけで179人、民主党から共和党への鞍替えはわずかに13人だった。

 上記4州は、いずれも両党にとって選挙での勝敗を左右する重要州だが、今後、他州でもこうした同様の動き出てくることが予想されており、とくに共和党員の離反が全米でさらに拡大すれば、来年の中間選挙、3年後の大統領選で共和党が再び苦戦を強いられることにもなりかねない。

 また、デジタル政治メディア誌「The Hill」は同日付で、「有権者の共和党離れはさらに深刻化している」として、①1月6日以来、全米各州のうち数州だけの数字として、3万人以上が共和党から離党した②この数字は氷山の一角に過ぎず、今後他州での登録調査が進むにつれさらに増加が予想される③ペンシルバニア州務長官室調査によると、1月初め以来の同州における共和党離反者は1万人近くに達し、このうち3476人が民主党員として新たに登録した④同じくノースカロライナ州では今年に入り両党から6000人近くが離党したが、このうち共和党離反者は5000人を占めた⑤こうした共和党からの「エクソダス」(大量脱走)は2018年中間選挙、2020年大統領選でトランプ陣営が苦戦した都市近郊の郡で顕著となっている⑤フロリダ州の2つの郡では米議会乱入事件後の2日間だけで合計1000人が共和党から離党した―などと報じた。

 アメリカでは政党間の鞍替えは本来、4年ごとの大統領選、および2年ごとの中間選挙の年に出てくるのが普通であり、選挙のない年にこのような党間の党員登録に目立った変化が出るのは極めて異例だ。

 選挙動向に詳しいフロリダ大学のマイケル・マクドナルド教授(政治学)は「The Hill」とのインタビューで次のように語っている:

 「予備選も何もない年にこのような党離反の動きが出てくるのは異例だ。通常なら、有権者は投票日が近づくにつれて、どちらの党に登録するかを決める。今回党派替えをした人たちはより洗練され、政治参加意識が高い有権者であり、次の選挙では投票所に行く確立もより高い……昨年の大統領選の前までは、どちらかといえば、わずかながら民主党から共和党への党派替えが多かった。今回はその逆の動きが出ているだけに注目される」

 また、「政治参加」が専門のメリーランド州立大学のマイケル・ハンマー教授は、ABCテレビで「両党間の党派の鞍替えは珍しいことではないが、1月6日以来の動きは大部分が一方的な共和党からの離反であり、バランスを欠いているのが特徴だ」と評している。

 暴徒化したトランプ支持者による米国政治史上前例のない議事堂乱入・占拠事件をめぐっては、前大統領の言動を厳しく批判する声が各方面で一挙に高まってきた。

 SNSでは、最大手のツイッター、フェイスブック両社がその後も、「トランプ・アカウント」締め出しを続けており、とくに在任中、連日のように自らのツイートで暴言、妄言を拡散させてきたトランプ氏は、フロリダの別荘に引きこもって以来、鳴かず飛ばずの状態がいぜん続いている。

 同氏別荘のある高級住宅地区パームビーチでは大統領選敗退以来、地域住民の間でマイホーム売却の動きが出ていたが、米議事堂乱入・占拠事件きっかけに、「コミュニティの名声を傷つけた」として前大統領に退去を求める署名運動まで出始めている。


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