Washington Files

2021年1月7日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 “余命”幾ばくもなくなってきたトランプ大統領の求心力がめっきり衰えてきた。バイデン次期大統領の当選を無効とする理不尽な戦いも万策尽き、共和党主流派からもついに見放された格好だ。

議会に乱入したトランプ支持者(ZUMA Press/AFLO)

 年明け早々、トランプ大統領の“威光”の凋落ぶりを象徴するニュースが飛び込んできた。いまだに大統領選敗退を認めたがらないトランプ氏がジョージア州のラフェンスパーガー州務長官(共和党)に直接ホワイトハウスから電話を入れ、延々1時間にわたり、同州での開票結果撤回を求め直談判した。

 3日付けワシントン・ポスト紙が、前日行われたこの会話記録をスクープ、一部始終を報じた。その内容の大部分は、大統領による愚痴、抗議、票集計やり直しの嘆願、応じない場合の脅し文句など一方的なもので、州務長官はこれらの指摘を「根拠なし」と否定し、要求に応じなかった。

 同紙によると、無理難題以外の何物でもないトランプ発言のさわりは以下のようなものだった:

 「とにかくジョージア州民は集計結果に怒っている。国民も怒っている。君が集計やり直しをしたとしても何も悪くない」

 「自分が求めているのは、(同州でトランプ票を)あと11780票見つけてほしいということだ。君ら、いいかね、1万1000票が必要なんだ・・・もううんざりだGive me a break」

 「自分がジョージア州を落としたなんてありえない。There’s no way。わが方は何十万票もの差で勝ったのだ(実際は1万2670票差で敗退)」

 「選挙不正捜査を妨害するために(同州の)フルトン郡で廃棄処分された何千という票を見つけ出さないならば、君らは刑事訴追されかねないぞ。それは犯罪行為であり、君らには大きなリスクがあるということだ。(すぐに集計やり直ししなければ)ジョージア州での上院議員特別選挙でも共和党候補二人が負けることになる」

 「とにかく自分は本当は最低50万票の差でジョージア州でも勝ったのだ。ところが、すでに死亡したはずの何千人という人間が投票し、アトランタではインチキ票1万8000票がそれぞれ3回にわたり集計データの中に組み込まれ、そのすべての票がバイデン支持だった。投票日になって州外から何千人という有権者が入り込んで来て投票をすませたりした。そんなわけだから、わが方から勝利を奪うという行為はアンフェアだ。このままではとてつもないコストを払わされることになる……君らがこうした不正に対する回答を求める人たちとともに、票の集計やり直しをしてくれさえすればそれで済む話だ……」

 結局、州務長官は、大統領のこうした長広舌にもかかわらず、11月3日大統領選投票後、すでに3度にわたり手作業で票を数え直したことなどを説明し、訴えを退けた。

 それでも大統領は、長時間の談判が受け入れなれなかったことがよほど癪にさわったのか、2日後の4日午後、ジョージア州の上院議員決戦投票で共和党候補を支援するため現地入りした際も、演説集会でラフェンスパーガー長官らの名前を挙げ、「彼らは共和党員だと言っているが、とんでもない。そんなはずがない」などと酷評し続けた。

 しかし実は、この前代未聞の長電話には、そこに至るまでの大統領による異常なまでのこだわりがあった。

 CNNテレビが“内情”を暴露した。それによると、大統領は、11月以来、南部諸州の中でもとくに共和党の牙城と位置付けられてきたジョージア州で自分が敗北したことが信じられず、側近たちに「あり得ない」「州選管はでたらめだ」「自分は大差で勝った」などと喚き散らし、「州務長官を電話で呼び出せ。自分がやり込めて何が何でも票の集計をやり直させる」などと指示していた。このため、ホワイトハウスの交換台オペレーターは大統領に催促されるたびにダイアルを回したが、州務長官はそのつど「論外」だとしてあえて電話口に出なかった。大統領はますます苛立ちを強め、当たり散らす日々が続いたが、ようやく18回目の電話で通じたのが、1か月後の去る2日の会話だったという。

 もともと大統領は12月下旬からクリスマス休暇に入り、1月3日までフロリダの自分のゴルフリゾートでのんびり過ごすはずだった。1日にはリゾート邸内の大宴会場で参加費一人2000ドルの豪華新年パーティが予定されており、熱烈なトランプ支持者たち300人が各州から駆け付けたが、大統領は開催予定時刻の数時間前になって、なんの説明もなしにメラニア夫人とともにエアフォースワンでワシントンに舞い戻った。

 報道陣の間では一時は「対イラン攻撃に備えるためか」といった観測まで流れた。

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