Washington Files

2021年2月15日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

バイデン米大統領は去る10日、主要国では最後となる習近平中国国家主席と2時間に及ぶ電話首脳会談を行った。そこから浮かび上がった対中戦略はトランプ前政権とは好対照をなしている。

(Dilok Klaisataporn/gettyimages)

 バイデン新政権の対中アプローチについては、わが国はじめ内外の事前予想では、オバマ元民主党政権時代の経緯を引き合いに、融和姿勢により中国の対外攻勢を加速させかねないとの見方が支配的だった。

 だが、大統領選当選後および正式就任後の発言、そして今回の首脳会談を見る限り、こうした半可通の指摘はどうやら的外れに終わったようだ。

 実際にフタを開けてみると、トランプ前大統領が就任直後にフロリダの自分のゴルフ・リゾートに招いて行った米中首脳会談で「偉大な指導者」と同主席に秋波を送り、その後も、中国の人権抑圧、不公正な貿易慣行、南シナ海への軍事進出などにはさしたる関心を示さなかったのとは似てもつかない厳しいトーンが目立つ。

 まだ詳細な詰めにまでは至っていないものの、現段階で浮かび上がってきたバイデン対中戦略の骨格は以下のようなものだ:

一貫性ある長期戦略

 中国を「最も深刻な競争相手 most serious competitor」と明確に位置付け、前政権のような付け焼き刃的な対処ではなく、長期的な視点に立ち、2035年にもアメリカを追い越し世界第1位のGDP大国となると予想される中国と真剣に立ち向かうことの重要性を強調。そのために、外交のみならず国内的にも、道路、河川、港湾、空港、学校、公立病院など老朽化したインフラへの大規模投資に乗り出すほか、国内的分断要因の除去と結束により、アメリカン・パワーの強化をめざす。

 この点に関し、ホワイトハウス高官はバイデンー習会談に先立つ事前ブリーフィングで、「トランプは過去4年の執政でアメリカの力の源泉を枯渇させ、政治システムと経済を不安定化させることで弱い立場に追い込み、中国を優位に立たせた」と厳しく批判、人種問題の克服、貧困対策などによって国内的力の回復が長期的に見て対中競争に打ち勝つ上でも重要との見方を示している。これは明らかに、派手な首脳会談と大統領選再選目当ての保護貿易主義を前面に押し出す一方、内政面では社会分断を煽り立てたトランプ政権の対中アプローチと一線を画している。

 また、バイデン政権は、トランプ時代の首尾一貫性を欠く〝気まぐれ外交〟が対中交渉における自国の立場を弱体化させたとして、総合的判断と予測性の高い政策を推進することで優位性を確保するとしている。

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