2022年12月9日(金)

Washington Files

2021年2月15日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

軍事プレゼンス維持

 歴代民主党政権は、貧困対策、福祉重視など国内対策に重点を移し、対外コミットメントが後手に回る傾向が目立った。しかし、今回バイデン政権は、内政と外交・安全保障をリンクさせ、アメリカにとって「最も深刻な競争相手」である中国に向き合うために、米軍事力堅持の姿勢も明確にした。

 この点で象徴的だったのが、バイデン大統領は米中電話首脳会談を行ったのと同じ10日午前、国防総省に駆け付け、ロイド・オースチン国防長官と協議、対中戦略について意見交換した事実だ。戦時ではなく平時に大統領が、しかも就任早々にペンタゴンを訪れるのは、極めて異例とされる。

 さらに、バイデン大統領はペンタゴン内で演説し「中国の挑戦に立ち向かい、競争に勝つために、強力な同盟とパートナーシップが重要」と強調した上で、同省内に対中戦略見直しのための特別作業チーム「Department of Defense China Task Force」を立ち上げたことを明らかにした。ホワイトハウスの説明によると、特別作業チームは「中国が提起するチャレンジに関し、ペンタゴン全体の諸政策、プログラム、プロセスすべてを根本的に見直すことbaseline assessment 」が目的であり、4カ月以内に在外米軍基地態様、前方展開戦力の再配置などについて具体案を大統領に提出することになっている。

 バイデン政権が発足当初から、中国に対しこうした確固たる姿勢を示したことは、当面、アジア諸国とくに日本、韓国、オーストラリア同盟諸国にとっては歓迎材料となり得る。

一部米メディアの報道によると、この新たなバイデン・ドクトリンの下で、より具体的に在韓米軍についても、朝鮮半島における米軍抑止力確保のため長期的に戦力を保持していくことは確実視されている。

 また、南シナ海においても、中国の軍事的脅威が存在するかぎり、米軍展開は継続されるとみられる。バイデン政権はすでに今月に入り、米空母2隻からなる艦隊を同海域に投入、軍事演習を実施したが、これも強い対中姿勢を示す一つの動きだろう。

人権擁護

 バイデン政権は、自由民主主義の価値観を同盟・友好諸国間の「共有財産」と位置付け、結束を図った上で、中国における人権抑圧問題を厳しく指摘する姿勢を打ち出した。

 ホワイトハウス声明によると、バイデン大統領は習近平主席との会談で「不公正な経済慣行などのほか、香港における住民弾圧、中国新疆ウイグル自治区での人権侵害、台湾を含む地域での向こう見ずな行動に関する根本的な懸念」を表明した。

 歴代民主党政権も人権問題重視の姿勢を打ち出してきたものの、米大統領が就任早々に中国首脳に対し、表立って問題提起した点も注目される。これは、中国共産主義体制が内包する弱点を内外に示し、自由主義諸国間の集団的パワーを誇示することで、今後の対中競争を有利に展開する狙いもあることは間違いない。

 これに対し、習首席は「両国の対立は世界の災難」「香港、台湾などの問題は内政干渉」として反論、今後、両首脳の相互訪問の可能性については双方とも一切言及はなかった。

 この点でも、就任1年目に首脳間の相互訪問を実現させ、対中友好ムードを演出したトランプ前政権との違いが浮き彫りとなった。  

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