2022年12月9日(金)

Washington Files

2021年3月1日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

BRI戦略の対案としての長期的対アジアインフラ投資戦略を打ち出す時

 一方、わが国は中国BRI戦略について、当初は慎重だったものの、2017年11月、ベトナム・ダナンで行われた日中首脳会談の場で安倍首相(当時)が「アジアでも中国と協力してビジネスを展開したい」として、同戦略への支持を表明した。

 もっとも、アメリカがトランプ政権下で対外コミットメント縮小の姿勢を示していた当時にあっては、日本が取り得る選択はほかになく、中国との協調姿勢を示さざるを得なかった面もある。いわば苦肉の対応だったともいえよう。

 その後は、菅首相は中国BRI戦略に対する明確な立場を表明していない。

 かたやバイデン政権はこれまでのところ、トランプ大統領が在任中に一方的に離脱した「環太平洋経済連携協定」(TPP)について、国内産業保護の観点から、再加入には慎重な姿勢を崩していない。

 そしてそれを見透かしたかのように、習近平主席がTPPへの新たな加入に意欲を見せていると伝えられる。

 もし仮に近い将来、中国のTPPが実現した場合、同時にBRI戦略、そしてRCEPでの存在感の増幅を合わせ、アジア全域における中国の経済支配は決定的スケールに達することは間違いない。

 バイデン政権は今のところ、関係閣僚人事を見る限り、基本的にオバマ人脈で固められている。しかし、対中国政策に関しては、バイデン大統領はきっぱり、オバマ元大統領時代の路線からきっぱりと絶縁し、中国の攻勢に対抗するために、BRI戦略の対案としての長期的対アジアインフラ投資戦略を打ち出す時が来ていると言えよう。

 この点に関連し、英誌「The Economist」最新号(2月27日付)は、アメリカがとくに東南アジアにおいて中国との対抗策を早期に打ち出す必要があるとして、次のように論じている。

 「アメリカは東南アジア地域が中国の傘下に入る前に、中国の影響力と対抗するさまざまなオプションを検討する必要がある。その一つは、貿易・投資などの積極策を通じ地域統合を推進することだ。アジア地域諸国は幸運にも、中国貿易に依存する一方、平和と安全維持のためにアメリカのより積極的役割を期待している。アメリカにとってその機は熟している。もう一点、アメリカがなすべきことは、日本、韓国などの同盟国との関係強化だ。これはアセアン諸国も待ち望んでいる。ただその際、アメリカが新たなアジア外交を進めるにあたって、中国がやってきたような剛腕外交により関係諸国を身構えさせるようなことがあってはならず、慎重さも求められる」

  
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