Washington Files

2021年2月24日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 保守派判事が多数を占める連邦最高裁が、政権交代後、前大統領に肘鉄となる裁定を相次いで下し、“混迷のトランプ時代”一掃に向け動き出したとして注目を集めている。

(Nature/gettyimages)

 最高裁は22日、ニューヨーク・マンハッタン地区検察から求められていた前大統領の納税関連書類提出命令問題について、提出を拒否してきたトランプ弁護団側の上訴を却下する判断を示した。最高裁は現在、トランプ大統領が就任後、新たに任命した3人の判事人事含め、保守派と目される共和党系6人、民主党系3人の9人の判事で構成されている。しかし、今回は全員一致という異例の裁定だった。

 トランプ納税記録問題については昨年7月、弁護団が検察側の提出命令を拒み上告していたが、最高裁はこの時は「大統領といえども、基本的に刑事事件がらみの関係書類提出を拒否する『根源的権限』を有しない」とする一方、地検の捜査権の範囲をめぐる判断についてはさらなる検討の余地があるとして結論を先送りしていた。今回は最終的に、検察側の強制捜査の妥当性を認めたものだ。

 最高裁はまた同日、トランプ陣営が先の大統領選挙めぐり、ペンシルバニア、ウイスコンシン両州での投票に不正があったとして「取り消し」を求め上告していた事案についても、それぞれ却下した。このうち、ペンシルバニア州にかかわる訴訟については判事2人が「異議」を唱え、7人が却下判断を下した。

 最高裁はすでに昨年12月、ジョージア州、アリゾナ州の両州における「選挙不正」提訴についても、トランプ陣営の主張を退けてきており、この結果、トランプ氏が大統領選直後から今日に至るまで執拗に訴えてきた選挙結果帳消しの法廷闘争は完全に行き場を失ってしまった格好だ。

 さらには別件で、妊娠中絶を行うクリニックへの公的医療補助を禁じてきたトランプ政権時代の政策をめぐっても、最高裁は同日、「違憲性」を理由に撤回を求めた婦人団体の訴えを受理したことを明らかにした。今後の審理具合では、前政権下の政策が見直される余地を残している。

 こうした最高裁の新たな一連の動きについて、ウォールストリート・ジャーナル紙、公共放送「National Public Radio」(NPR)などは「トランプ時代の“残滓一掃”をめざしたもの」との見方を伝えている。

 この中で、トランプ氏にとって当面、最も深刻な“ボデーブロー”となったのが、自身の過去の納税関連書類開示命令であることは間違いない。

 トランプ氏は最高裁判断が出された同日、ただちにこれを遺憾とする長々とした声明をメールを通じて発表、「ニューヨーク・マンハッタン地検捜査は民主党丸抱えのあらゆる魔女狩りの一環だ。最高裁は断じて手を貸すべきではない」と怒りをあらわにした。さらに在任中に弾劾にさらされてきたロシア疑惑、議事堂乱入事件などにも言及「自分には何の罪もないのに、“クレイジー・ナンシー”(ナンシー・ペロシ下院議長)らは自分をおとしいれてきた。どんなことがあっても戦い抜く。そして勝利する」などとまくし立てた。

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