2022年12月4日(日)

Washington Files

2021年2月24日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

謎だらけだった“トランプ王国”の実態解明

 最大の焦点である納税記録開示問題については、歴代大統領は就任時に公民としての範を示す意味から例外なくすべて公表してきた。トランプ氏だけは例外で、4年前からの報道陣の度重なる指摘に対しても、「税当局が精査中」「精査終了後、公表する」との主張を繰り返すだけで、今日にいたるまで関連書類公表を一切拒み続けてきた。

 これに対し、敢然と立ち向かい始めたのが、捜査能力、規模において東京地検とも比肩されるウォール街に本部を置くマンハッタン地検のサイラス・バンス首席検事率いる特捜班だ。

 バンス検事らは当初、トランプ大統領就任直後から浮上してきた女性スキャンダルもみ消し事件をきっかけに内偵を開始したが、途中から、不動産取引で急成長した“トランプ王国”の本部となっている「トランプ・オーガニゼーション」の税処理を含む経理全体を対象とした大がかりな捜査に切り替え、2019年8月には、税務を一手に引き受けてきた大手法律事務所「Mazars USA」関係者を大陪審に召喚してきた経緯がある。

 この大陪審審理の際に、検察側が要求したのが、納税関連書類の提出だったが、トランプ氏は、大統領は在任中に刑事訴追を受けない「大統領特権」をタテに要求を拒否し法廷闘争に持ち込んでいた。

 しかし、最終的に連邦最高裁が納税記録開示にゴーサインを出したことから、これまで謎だらけだった“トランプ王国”の実態解明に拍車がかかることが予想される。

 マンハッタン地検は早速、今週中にも「Mazars USA」からパソコン・ファイル、フロッピーなどを含む膨大な資料を入手することになっており、同会計事務所も「法に従い捜査に全面協力する」と表明している。

 ニューヨーク・タイムズなどの報道によると、地検捜査で最大のハイライトとなるとみられるのが、「脱税疑惑」だ。

 特に検察側は、トランプ氏が大統領就任以前の不動産取引において、ゴルフ・リゾートや高層ホテル、オフィスビル買収の際、銀行融資取り付けのため、担保となる自己保有資産について実際相場とはかけ離れた意図的な「過大評価」申告をする一方、不動産売却にともなう取得税申告の際には、逆に相場以下の「過小評価」を繰り返してきたとみており、資産の「過大評価」と「過小評価」のギャップがらみの複雑な経理処理に注目しているという。

 この点に関連し、地検はすでに、最近までトランプ氏の最大取引銀行だった「Deutsche Bankドイツ銀行」側の責任者などから事情聴取に乗り出してきており、さらに今回の最高裁判断を機に同行からの関係書類押収にも弾みがつくことは必至だ。

 また同地検は今月に入り、マフィア組織摘発などで実績を挙げ「組織犯罪捜査のプロ」として名高いベテラン捜査官のマーク・ポメランツ氏をトランプ事件関連の「特別次席検事」として抜擢登用したことが明らかにされた。ニューヨーク・デイリー・ニュース紙報道によると、ポメランツ検事は去る2日、着任後、すでにトランプ氏の専任弁護士だったマイケル・コーエン氏から詳しく事情聴取に着手したという。

 コーエン氏はトランプ氏が大統領選に出馬した2016年から当選後の2018年に解任されるまで、約3年間にわたり個人弁護士として仕えた最側近の一人であったことから、トランプ氏が大統領就任後もオーナーを務めてきた「トランプ・オーガニゼーション」の内情にも精通した重要人物として大きな関心が持たれてきた。

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