2022年12月4日(日)

Washington Files

2021年3月8日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

毎年開かれない州議会

 さらにテキサス州の特異性の典型としてしばしば話題に上るのが、ユニークな州議会の存在だ。同州議会は州憲法により、毎年ではなく奇数年ごとに1回本会議が招集され、会期も「140日以内」と規定されている。全米50州中、毎年必ず議員たちが招集される会期がないのはテキサスだけだ。このため議員たちの政治参加意識も高いとはいえず、州議員のほぼ全員がほかに定職を持つ「パートタイマー」としても知られる。この結果、有事の際に、機敏に対応できる「政策能力」も他州に比べ格段に見劣りがする。

 州全体の警察、消防署の数も極端に少なく、ヒューストンの中心街を歩くと、やたら「私立探偵事務所」の表札を掲げたオフィス、案内チラシにおめにかかかることもしばしばだ。

 まさに、政府の介入を忌避し「スモール・ガバメント(小さな政府)」を是としてきた共和党伝統路線の象徴ともいえよう。

 こうしたテキサス州の“悲劇”について、ワシントン・ポスト紙ベテラン・コラムニストのダン・バルツ氏は最近号で「今回の事態は、政府の大小をめぐる是非論ではなく、危機対応がきちんとできているか否かの問題だ」として以下のように論じている:

 「今回の寒波の最中に、『市としては何ら負うべき責任はない』と公言、ごうごうたる批判を浴びて即辞任に追い込まれたテキサス州コロラド市の市長は例外としても、同州の政治家たちはかねてから、公共サービスの少ないスモール・ガバメントを誇りとし、州外の事業主たちに対し、州税のない同州への企業誘致を呼びかけてきた。

 その結果、全米でも有数の雇用創出州となったが、その反面、医療保険料は全米最高となり、高額保険料を払えない保険未加入者数は最多というみじめな状況を作り出した。過去にも何度も、寒波、水害などの自然災害に見舞われ、電力グリッドの近代化、インフラ整備の必要性が叫ばれてきたが、州議会は予算上の理由などで何ら行動を起こさなかった……寒波は近隣州を同時に襲ったものの、停電、断水などの住民被害は突出してテキサスが大きかった最大の理由は、まさに同州特有の『徹底個人主義rugged indivisualism』にある……かつてレーガン大統領(共和党)はいみじくも『政府は我々が抱える諸問題の解決にはならず、かえって問題そのものだ』という有名な言葉を残したが、まさにこの信条を体現したのがテキサスにほかならない。

 多くの州民が今回の災害から完全に立ち直るには、今後何カ月もかかると予想され、その間、州政治家たちの間で事態が深刻化したことをめぐり原因究明や責任のなすり合いが行われるとみられる。だが、果たして、今後同様の災害に備えた改善策が講じられ、責任の取り方についてまじめな議論が戦わされるかどうかは不明だ」(同紙2月21日付)。

  
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