2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2012年10月3日

 この手紙のやりとりが、草刈と瀬戸の心理ドラマの重要な小道具となっている。古風な文通によって、あるときは励ましとなり、またあるときには気持ちのすれ違いを表す手法は新鮮である。

清楚な美しさは消されているが……

 瀬戸は徹底した合理主義者である。お客や従業員に対してはにこやかな好青年ぶりを発揮している。それは計算しつくされた演技である。

 第3回のなかで、草刈がたまたま客室の廊下で聞いた母子の会話から、宿泊しているその父親が誕生日であることを知り、その話を聞いた瀬戸が、バースデーカードと花を届けた後のシーンである。総支配人室に入っていた草刈に気づかずに、お客がよろこんだことを知らせる秘書に対して、瀬戸は「こころがこもっていなくても客が喜べばいい」という。

 それを聴いた草刈は愕然とする。

 第4回で、瀬戸が政略結婚の相手とバーで飲むシーンがある。愛のない結婚であることに、相手も納得している。瀬戸の複雑な家族関係が暗示される。

 「Sall We ダンス?」のなかで、草刈を一気にスターダムに押し上げた、あの清楚な美しさは、「眠れる森」の主婦の表情からは消し去られている。しかしながら、瀬戸との関係が深まる予感が漂いはじめ、その草刈が美しさを輝かせる瞬間がくるであろうと思わせる。

 第4回のタイトルは、夫を奪った女性編集長の雑誌の特集の「女性はやり直せる」と言葉遊びのように、合わせたものである。女性編集長は、雑誌に顔写真が掲載されている。その雑誌をみて、草刈は初めて夫の相手の顔を知る。

 女性編集長が、仕事の忙しさから草刈が働く高級ホテルの一室を昼間使ってリフレッシュする。その部屋の掃除にきた草刈は、忘れ物の携帯電話をみつける。編集長が部屋にあわてて戻ってくる。鉢合わせした草刈が、立ち去ろうとする彼女を呼び止める。

 「女性はいくつになってもやりなおせるのでしょうか?」と。

 「雑誌を読んでくださったのね」と彼女はこたえる。

 草刈は続ける。


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