2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年10月8日

 間もなく就役する空母や071タイプの水陸両用戦闘艦は、特に南シナ海沿岸諸国のような、はるかに軍事力の劣った相手に対しては、有用だろう。対潜水艦戦においては、中国の所有する核搭載潜水艦は、海中においてかなりの音を立てることが知られている。最近かなり改善されつつあるとはいえ、これまでと大きくは変わっていない。補給艦は外征に欠かせないが、中国は3隻保有するのみであり、米国は32隻を保有する。今後どのように増強されるか注目される、と論じています。

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 この論文は、中国の海軍力増強の方向性が二重構造になっていることを説明するとともに、「近海」及びそれに隣接する海域が重点地域であることを指摘しています。隣接する海域の中には、西太平洋全体が含まれていると見るのが妥当でしょう。

 2007年春、米キーティング太平洋軍司令官に対し、中国軍高官(海軍大将)が、ハワイを起点に太平洋を東西に分け、それぞれを米中で分割管理してはどうか、との非公式提案をしたことがあります。キーティングは、後に米国議会において証言していますが、この中国側発言は、当時、中国が明らかに「近海」の範囲を超えて、隣接する西太平洋全体に特別の関心を抱き始めたことを示しています。

 中国初の空母は、何度かの試験的就航を経て、ついに就役に至っています。本論文が指摘する通り、中国の海軍が外洋海軍としては種々の性能上の限界をもちつつも、南シナ海や台湾海峡などの「近海」においては、空母の就役は、――たとえそれが一隻だけであったとしても―― 一定の政治的・外交的効果を及ぼすものと見なければならないでしょう。

 また、海洋権益の主張において、中国が独自の例外的ルールを作るところに問題がある、とする本論文の指摘は正鵠を射たもので、こういうやり方こそが、中国の戦略概念のひとつである「法律戦」の正体と言えるでしょう。特に、南シナ海、東シナ海、台湾海峡などについての主張には、その傾向が強く、それは日本の安全保障に直結することですから、入念な対応が求められます。

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