ダイソンの方向転換
ジェームス氏が、新しい方式の掃除機を作ろうといい出したのは、2018年のクリスマスだったそうです。その時、開発側としては、手持ち式の基本設計は、ほぼ終了。あとはリファインと、手持ち式の課題、軽量化があるだけです。だけと言っても大変な作業ですが、少なくともトップは、次のことを考えなければなりません。
一つの方向性はありました。
手持ち式の場合、前後の動きは楽でいいのですが、左右の動きは、手首を使う必要がありますので、重い掃除機だと、ちょっと使いにくい。また、ゴミの吸い込みも前後の動きを基本に作られています。そうは言っても、横に動かした方が合理的にゴミを吸えるというシーンなどはよくあります。
それを押し進めると、「自由度の高い、全方向どちらに移動させてもゴミを吸い取るヘッド」というアイデアが出てきます。
今まで前後方向だけだったので、ブラシは1つで済んでいました。前後の動きがメインとしても全方向になるとヘッドの考え方を変える必要があります。分かっているのは、大きく、そして重くなるだろうということです。しかしヘッドをいろいろな方向へスムーズに動かすには、プラス方向です。
できる限りヘッドに恒常的な力をかけてやる必要があります。となると低重心化、いわゆる自立式の方向を模索する等々、新しい要素がごまんと入ってきます。
また、ダイソンとして今まで培ってきたもの。「サイクロンシステム」は外せませんし、「クリーン排気」も外せません。主要にしたい新製品にメーカーエッセンスが入っていないなんて考えられませんので。
そして、でき上がったのが、今年発表されたモデル「dyson omni-glaide」(以下 オムニ)です。低重心なのですが、本体は手持ち式に近い位置にあるという独特のレイアウトを持ったこの掃除機を、ダイソンは「全方向駆動コードレスクリーナー」と呼んでいます。新しい呼び方です。
Omnidirectional Fluffy(オムニダイレクショナル フラフィ)
クリーナーヘッド
オムニで目をひく特徴は、やはりヘッド。Omnidirectional Fluffy(オムニダイレクショナル フラフィ)クリーナーヘッド)と言います。(以下 オムニヘッド) その名の通り、中にはフラフィーローラーが2つ入っており、ローラーは別々に逆方向、中央にゴミを寄せるように回転します。
そして360度回るキャスターホールを4つ配置、力を入れた方向へすぐさま回頭、ゴミを追従します横方向へ力を入れるとヘッドが90度回頭するというわけです。こうして常にベストの吸引を実現させています。
大きいように見えるヘッドですが、幅は208ミリとさほどではありません。普通のヘッドに比べると四角という感じです。これはクルマでも同じですが、縦横比が1に近いほど、つまり正方形に近い形の方が回頭性がいいです。昔のクルマですが、ほぼ真四角のランチャ ストラトスなんて、ラフにアクセルを吹かそうものなら、その場でスピンを始めたそうです。オムニヘッドにも、そんな回頭性の良さがあります。