家電口論

2021年4月15日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

 ダイソンが発表した新型スティック型掃除機「dyson omni-glide」(ダイソン・オムニーグライド)。実物を見てうなりました。しかし、もしかしたら、一番たじろいでいるのは日本の家電メーカーかもしれません。というのは、ダイソンが宗旨替えしたに近い製品だったからです。

「dyson omni-glaide」

スウェーデンから始まったスティック型掃除機

 

 スティック型掃除機の設計で最も重要なポイントは何でしょうか?

 答えは「重量」バランスです。掃除機の重さをどうやって吸収するのかという意味です。現在あるスティック型掃除機をスタートさせたのは、スウェーデンのメーカー、エレクトロラックス社です。日本では、エレクトロラックスを知らない人もいるかも知れませんが、オランダのフィリップスと肩を並べる欧州の巨人と言われるメーカーです。

 そのメーカーが2004年に出したのが「エルゴラピード」と呼ばれる2 in 1型の自立式スティック型掃除機です。当初から設計完成度が非常に高い製品で、あとはバッテリーを、モーターを、ヘッドを、そして吸い込み機構、排気機構の細部を改良、機能完成度を高めればいい、と言い切ってもいいレベルでした。

 中でもいいなぁと思ったのは「自立式」であること。「自立式」というのは、重心を低く、床に近くとることにより、手に負担をかけない方式のことです。低重心なので多くのモデルが自立機能を持ちます。そして、スティック型掃除機が2キロを超える場合でも、手に掛かる重さは約700グラム程度(筆者計測)。軽い力で使えるユーザーにとってありがたい設計と言えます。

 スティック型掃除機の本体は、全て「ハンディ掃除機」です。「エルゴラピード」というのは、軽いフレームを作り、その下部に本体を嵌め込むことにより、低重心化しています。使い易い上に、シンプルなデザインでもあり、このモデルを越えるのは、容易ではないだろうと、思いました。近年、大幅なデザインチェンジをしましたが、設計思想は同じです。

 ところが日本メーカーは、スティック型掃除機参入に、とまどいます。理由はバッテリーです。掃除機の一般調査で「掃除機をどの位使いたいのか」と質問すると、一番多い答えは「60分」。これは、いつの調査でもあまり変わりません。個人的には、長すぎるだろうと思わないでもないのですが、お客様は神様。当時のバッテリーでは、「弱モード」でも20分程度。「強モード」だと数分。ただ、バッテリーも、モーターも開発した分だけよくなりますので、年々実力は上がることは分かっています。そのため、様子見したのだと思います。

 そうしている間に、強力なメーカーが、この分野に参入してきます。それがダイソン社です。

スティック型掃除機にかけたダイソン

 ダイソンが、スティック型コードレスクリーナー DC35を出したのは、2011年。重さ、2.2キロ。通常モードで15分間(モーターヘッド使用時は13分間)、 強モードで6分間の使用が可。まだファーストモデルでしたが、ダイソンの魅力、特徴である「サイクロンシステム」「トリガースイッチ」などは搭載されており、やはりダイソンというべき仕様でした。

 そして、2015年から、現在に続く型番「V」シリーズに切り替え。そして、2016年Fluffyヘッドを使ったV8で一応の設計完成を見ます。同時期に、キャニスター型開発の打ち切りを決定します。いろいろな意味がありますが、創業者のジェームス・ダイソン氏がEV(電気自動車)を開発したくて、掃除機にさく時間を少なくしたかったことが大きな理由と聞いています。以降、V10、V11と続くのですが、小修正。しかしディテールはグングン上がります(モーターなど新開発ですが、方向性は同じなので小修正と記載しています)。

キャプ

 ところで、ダイソンが採用したスタイルは「手持ち式」です。手持ち式は、機動性に優れます。しかし、それなりの重さのものを手に持ち、使っていくわけですから疲れていきます。是非はともあれ、ダイソンは、エレクトロラックスとは別の道を選択したことをご承知ください。

 そして日本メーカーは、日本市場でトップのダイソンを追従するように、全メーカー「手持ち式」を主流にします。「自立式」と言う、ユーザーメリットの高い、少なくとも腕の負担が少ない方式をメインにした会社は一社もありません。全社、同じ方向で商品化です。ある意味、一人負けしない商品作りを会社から命じられる、極めて日本的姿でもありました。

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