2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年10月25日

 もちろん、リスクもある。ミドルパワーのリーダーシップは、時に、稚拙だったり、あるいは、狭量な反米主義に突き動かされてしまう可能性がある。しかし、多くの新興国が米国の言いなりになっていると見られるのは避けたがっていることを考えれば、ワシントンにとってミドルパワーは、長期的によりよい選択ということになろう、と論じています。

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 この論説は、南シナ海紛争をめぐりインドネシア外交が珍しく見せたリーダーシップに触発され、売り出し中の学者であるブルース・ギリーが書いた一文ですが、中国が米国の言うことを聞き入れないことを、争いの余地がない前提としているように見える点に、いささか違和感を覚えます。ギリーの主張は、米国が押しても引いても動かない難物・中国が、インドネシアのような、北京から見て恐れるに足りない中規模国の言うことをむしろよく聞くかもしれない、ということです。

 米国の力が相対的に落ちる分を、民主主義的ミドル・パワーの増分で埋め合わせようとすればよいと、ギリーは計算しているのです。しかし、そのような計算が成り立つのは、ミドル・パワー(ここではインドネシア)が中国の恫喝や威嚇をかいくぐれる限りにおいてであって、この際の天井は低いものです。限界を突き抜けた後、再び現れる規定要因は、北京の目から見て米国とその同盟が十分に強いか否かということになります。もし、米国がこの鉄則を忘れ、ギリーのようなことを言い始めたならば、北京に足下を見られるだけとなるでしょう。

 ミドル・パワーが存分に動けるための大前提は、背後の強国が真に強いこと、いわば岩盤が強固なことです。クリントン外交は、米日豪、できれば韓のスクラムを強固にしようと努力してきており、目指すところは、上記大前提から逸脱しないものでした。しかし、オバマ再選のあかつき、ヒラリー・クリントンの後継者として名前が挙がっている、ジョン・ケリーにせよ、スーザン・ライスにせよ、必要な気骨があるのかどうか、疑問符がつきます。もはや言っても仕方ないことですが、クリントンの退任は、惜しみて余りあります。

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