2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2012年10月17日

 梅子夫婦は、結婚から6年がたって、ふたりの息子がいる。診療所の経営は、周囲の人々の評判に支えられて順調である。信郎の町工場も開通の準備が進む、東海道新幹線の車両の重要な部品を受注して、忙しい。

 ふたりの間に、倦怠期の夫婦のすき間ができてきたようである。

 信郎の工場を取材に訪れた、雑誌の女性記者が信郎にほのかな好意を寄せる。

 そして、梅子の働いていた帝都大学医学部の研究室でも。友人の女性医師が、新人の研修女医と、同僚の男性をめぐって、恋のさや当てに発展しそうな雲行きである。

年齢を経て新たな展開を見せる夫婦の物語

 朝のシリーズでは描かれていない、男と女の不倫の疑惑と、嫉妬が描かれている。「梅ちゃん先生」の成功は、それぞれの登場人物が新たなドラマを作り出していけることを示しているようである。

 テレビ朝日の人気ドラマで、秋の改編によって、水谷豊の相手役が入れ替わった「相棒」でも、鑑識係を主人公にした、いわゆるスピンアウト・ドラマが製作されている。

 梅子と信郎の夫婦の物語は、年齢を経るにして新しい展開をみせる。

 父親の下村建造は、大学を退官後、千葉の病院長として夫婦で家をでたが、ときどきは戻ってくる。

 つまり、三世代同居、そして、娘の夫、息子の妻、そのこどもたちが多く集まるシーンは、スペシャルでも変わらない。

 「梅ちゃん先生」は、東日本大震災で日本人が改めてその大切さに気づいた、家族の愛の物語であった。梅子を演じる、堀北真希が昭和生まれの女優であったのは、偶然ではない。堀北が終戦直後のシーンと、大震災後の風景を重ね合わせてみていることについては、このコラムのシリーズですでに述べた。

スペシャルドラマに見た「青春映画」の残像

 今回のスペシャルをみると、「梅ちゃん先生」が改めて、「青春映画」の定番だったことに気づかされる。


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