2024年11月22日(金)

渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年10月22日

階級闘争を醸し出すポピュリズムよりは
持続可能な成長戦略を

 ただ、ローゼンバーグは、オバマの経済ポピュリズム路線は、2011年の秋に突如として生じたものではなく、同年のレイバーデー明けの雇用対策法案は2011年一般教書演説を土台にしている部分もあるし、2012年の一般教書演説に受け継がれており一体性はあると認めている。しかし、「オバマ政権の誤算は債務上限問題のマネージメントだった」と総括する。階級闘争の構図作りには否定的だ。

 「ニューデモクラットとして言わせてもらえば、アメリカにおける経済環境は激変している。ビジネスを悪魔のように扱い、資本家と労働者を敵対の構図におくことを目的にしている場合ではない。持続的成長が可能な経済プランは何なのかが問題であり、それこそが論争で論じられるべきことだ」

 ローゼンバーグは共和党が変質したこともポイントだと言う。

 「レーガンやパパ・ブッシュの頃の共和党との違いは、彼らは経済成長に目を向けていたことだ。近年の共和党は権利保護ばかりに熱心だ。経済アプローチの全てが、富裕層の減税を死守することに収斂している。1990年代、富裕層増税をして経済はうまくいった。ここ10年は富裕層減税して経済は悪化した。アメリカ合衆国が経験から学んだのは、富裕層減税を死守することは国全体の国益にはならないことだ」

 ローゼンバーグは成長戦略の具体策がないことは共和党の弱点を攻撃するチャンスを見逃すようなものであり、「オバマはこの種の経済議論に勝てなければ、選挙では勝てない」と述べていた。

2008年民主党大会「クリントン・フェスタ」の含意

 かつてオバマは、シカゴでクリントンの福祉改革を批判して、地元リベラル派の信頼を勝ち得た。2008年も反クリントン候補として党内革命を起こした。クリントン夫妻とオバマの関係が決して良くなかったのは、マーク・ハルペリンらが著作(『GAME CHANGE』)で明らかにしている通りだ。

 2008年全国党大会では、オバマ派とクリントン派の対立は予備選直後で完全には癒えていなかった。4年前のデンバーの全国党大会で、オバマ派のスタッフは筆者にこう言ったものだ。「マサ、2日目はクリントン・フェスタだ。会場に行ってもしょうがない。俺たちはその夜はバーで飲むけど、お前はどうする?」。筆者は常にオバマ派とクリントン派の双方に散らばる旧知の仲間のあいだで、股が引き裂かれる思いをしてきた。


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