ロムニーとオバマの対決の構図が出来上がったアメリカ大統領選挙は、ロムニーの副大統領候補選びに早くも注目が集まっている。副大統領そのものが、直接大統領選挙に及ぼす影響はさほど大きくはない。秋口に本選で行われる副大統領ディベートも大統領候補同士のそれに比べれば、重要性は低い。しかし、副大統領候補に誰を選ぶかは、大統領候補としてのセンスを問われる最初の大きな政治判断である。また、副大統領候補は往々にして、大統領の欠点や苦手としている票田を補完する役割を期待される。有権者が副大統領候補で投票を決めることはなくても、大統領候補の評価には関係する。
副大統領候補として言及される共和党政治家リスト
米「ニューヨーカー」誌が発表しているTGM Veepスコアというものある。副大統領候補として、直近1カ月間にロムニーの副大統領候補として、誰がどれだけ言及されたかという回数を週ごとにスコア化したものだ。それによれば、圧倒的に多いサントラム氏を除けば、マルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出)、ポール・ライアン連邦下院議員(ウィスコンシン州選出)、クリス・クリスティ知事(ニュージャージー州)が、2012年4月20日の調査では、1000回以上言及され、3位までを独占している。
4位以下には、ボブ・マクドネル知事(ヴァージニア州)、ロブ・ポートマン連邦上院議員(オハイオ州選出)、ニッキー・ヘイリー知事(サウスカロライナ州)、ボビー・ジンダル知事(ルイジアナ州)、ミッチ・ダニエルズ知事(インディアナ州)、ジェブ・ブッシュ元知事(フロリダ州)、スザナ・マルチネス知事(ニューメキシコ州)、コンドリーサ・ライス前国務長官、ティム・ポーレンティ前知事(ミネソタ州)、ブライアン・サンドバル知事(ネバダ州)などがランク入りをしている。
名前がどれだけ事前に取沙汰されるかと副大統領候補として選ばれる確率は、まったく無関係ではない。08年には、民主党候補になったバイデンは、有力な一人として相当程度言及されてきた。他方、共和党候補になったサラ・ペイリンのように、彗星のように現れるパターンもある。
「ペイリン副大統領候補」を的中させた保守系評論家
2012年大統領選挙では、ロムニーは誰を副大統領候補に選ぶのか。保守系政治誌「ヒューマン・イベント」の編集者であり保守系コラムニストであるジョン・ギジ氏の意見に耳を傾けることから、今年の副大統領候補選びを考えてみたい。筆者とギジ氏は不思議な縁があり、これまでワシントン、ニューハンプシャーなど大統領選挙の現地調査の節目で合流しては意見交換を重ねてきた。
ギジ氏の政治批評の真骨頂のひとつは、数十年の経験をもつ大統領選挙取材のなかでも副大統領候補動向だと筆者は見ている。08年、ギジ氏は「ヒューマン・イベント」誌で16人の注目共和党政治を特集した。ギジが1番最初に注目してインタビューしたのは誰か。他ならぬサラ・ペイリンだったのだ。08年4月に全16回連載の初回で、ペイリンに会って取り上げている。実に早い。
この頃はまだ、共和党関係者であろうと、マケイン陣営であろうと、ペイリンの名など出すものはいなかった。ある意味では、ギジの特集がマケイン陣営に間接的な影響を与えたと囁かれるほどだった。ギジは「最初がペイリンだったので、特集の連載はすぐやめるべきだった」とジョークを飛ばす。ギジのペイリン予想的中があまり知られていないのは、その後15回分もの連載を継続してしまい、後続の特集のなかで印象が薄められてしまったからだ。そのギジに、2012年の共和党とロムニーの副大統領選びを直接聞いた。