2024年11月22日(金)

渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年11月5日

 民主党得票の実質的な下限は64%、上限はクリントンが1992年に獲得した80%とされている。2000年には正統派ユダヤ系のリーバマン上院議員が副大統領候補だったが、それでも79%であり、約2割の共和党を切り崩すことは民主党には難しいと見たほうがいい。

激戦州の結果を左右するスウィングボーターとして

ユダヤ系の各州の割合
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 ユダヤ系の各州の割合を調べたのが右の表だ。2012年の大統領選で激戦州となっているフロリダやオハイオでは人口の一桁台に過ぎない。

 しかし、ユダヤ系の僅かな票が全体を揺るがすことがある。次の表は2008年の結果だが、非ユダヤ系だけでは50%だったオバマの得票をユダヤ系の支援が1%押し上げている。政治的な熱心さは選挙へのコミットメントと同義でもある。大口献金者としても、地域の票を取りまとめるコミュニティ・リーダーとしても、人口の少なさには見えない重要性が潜む。とりわけ激戦州では数千、数百のスウィングボートが命運を決することがある。

フロリダ州2008年の結果
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 ユダヤ系市民の大半は都市部に集住している。オハイオ州ではシンシナチに2万7000人、クリーブランドに8万1500人、コロンバスに2万2000人のユダヤ系がいるとされる。オハイオ州クリーブランドは筆者も選挙キャンペーンで訪れたことがあるが、都市部は圧倒的に民主党支持者が多い。ロムニーにとって欠かせないフロリダ州でも、ユダヤ系は圧倒的に民主党寄りである。

基本的に社会・文化争点でリベラルな傾向

 そもそもユダヤ系有権者はリベラル志向が強い。2012年3月のユダヤ系有権者を対象としたJ-Street調査では、「ほとんどすべてのケースで人工妊娠中絶は合法であるべき」と回答した人が93%、「同性婚は合法」と回答した人が81%、「年収100万ドル以上への増税を支持」との回答が81%、「富裕層優遇が行き過ぎていると思う」との回答が73%、「貧富の格差是正に政府がさらに役割を果たすべき」との回答が64%だった。

 社会・文化争点で極めてリベラルな上に、経済的には富裕層も多い有権者集団にもかかわらず過度な「富裕層優遇」を戒め、格差是正に関心が高いことも民主党とオバマ支持を裏付けている。


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