2024年12月4日(水)

近現代史ブックレビュー

2021年8月16日

読者を大切にした著者に報いる道と信じて

 研究において一番大切なことは、テーマに関する根本的資料を調べることは当然だが、新しい説を出すにあたってはこれまでどのような説が出ているかをよく調べ、自分の出している説が既に出ていないかをきちんと確かめることである。既に出ているものと同じ内容を新説のように発表することは、最も注意しなければならないことである。

 お年の半藤氏にそうした注意がなかったのか、私の本を読んでいて忘れてしまっていたのか、亡くなられた今となってははっきりしない。

 いずれにせよ、この文章には、そのほかにもすでに知られていることを新説のように述べたり、資料的に成り立たない説を立てたりなど間違いが少なくない。

 最初にも書いたが、半藤氏が昭和史への多くの読者の関心を高めるという大きな功績を挙げられたことは間違いのないところだ。こうした功績を認めつつも、間違いははっきり書いておくことが、むしろ一般読者を大事にした半藤氏に報いる道だと信じ以上を書かせていただいた。

 二・二六事件研究については他にもおかしなものがまかり取っているので、それについてはまた別の機会に書くつもりである。関心のある読者は二・二六事件についてのこれまでの研究を概観したものとして、拙著『二・二六事件と青年将校』(吉川弘文館)の巻末の「研究史・参考文献」及び『二・二六事件東京陸軍軍法会議録 解題』を参照されたい。

 
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Wedge 2021年9月号より
真珠湾攻撃から80年
真珠湾攻撃から80年

80年前の1941年、日本は太平洋戦争へと突入した。
当時の軍部の意思決定、情報や兵站を軽視する姿勢、メディアが果たした役割を紐解くと、令和の日本と二重写しになる。
国家の〝漂流〟が続く今だからこそ昭和史から学び、日本の明日を拓くときだ。


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