米国の取るべき措置は次のようなものだ。1)太平洋における指揮系統を強化する。「アジア重視」は称賛に値するが、言葉だけに終わらせてはならない。2)米海軍の艦船数を増加する。現在の米海軍艦船数は285隻であり、これをどこまで増やすことが出来るか。3)国防予算を増加させる。4)軍事だけに頼らない。戦略的コミュニケーション、外交的圧力、経済措置などの諸手段を講じて対抗する。以上のことが重要である、と述べています。
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上記のD. チェンの論評は、空母「遼寧」就役の意味を軍事面、政治・外交面にわけて論じたもので、全体としてバランスのとれた妥当なものと思われます。軍事的には、いくつかの制約条件を抱えながらも、空母就役の政治・外交的影響は、とくに、東シナ海、南シナ海などでは大きいと指摘しています。
米国にとっての課題として、「アジア重視」という基本方針の表明にもかかわらず、それを具体的に裏付ける指揮系統、装備、予算措置などが具体的に実施されていないという指摘は、最近の米国内識者の多数の意見を代表しているように思われます。
日本にとっての喫緊の課題は、兵力を常駐させることを含め、尖閣諸島およびその近辺の南西諸島の防備をいかに固めるかでしょう。中国の空母が東シナ海に入ってくることを想定して、具体的対策を練っておく必要があります。尖閣については、漁船や漁業監視船のような非軍事的手段を用いることもあれば、漁民を装った形の軍事力が大量に投入される場合もあるかもしれません。
長期的な観点から見て、複数の空母を保有し、それを戦闘準備の整ったものとするには、巨額の経費を必要とすることはよく知られており、ソ連邦崩壊の一因が複数空母の保有だったとする説もあります。ただし、この説が中国に当てはまるかどうかは、長期的将来のことです。当面の措置として、日本は、中国の空母が、東シナ海は言うまでもなく、南シナ海、台湾海峡および台湾東部海域などを遊弋する場合をも想定し、抑止力を高めるための種々の方策を見直す必要があるでしょう。
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