10月11日付米ヘリテージ財団のサイトで、Dean Cheng米ヘリテージ財団研究員は、最近、就役した中国の航空母艦「遼寧」は、軍事的には、まだ未整備な部分を含んでいるため現実の「脅威」とは言えないが、政治・外交的には、とくに周辺地域の国々に対して影響力を及ぼし、威嚇的効果を持つことになろう、と論述しています。
すなわち、空母「遼寧」の就役によって、5安保理常任理事国のうち空母を保有していない国はなくなった。中国の新空母は、まだ甲板上からの離着陸については、作戦準備が整った状況ではない。軍事的にみて、今後、さらに整備・訓練を要するものとして次のようなものが挙げられる。
イ)空母の甲板上での固定翼戦闘機による離着陸の訓練は行われたことがなく、陸上訓練場において数回訓練が行われた。
ロ)中国は空母搭載戦闘機として、ロシア製Su-33の購入を進めており、同時に、J-15と呼ばれる自国機を開発中である。
ハ)空中早期警戒体制を整備する必要があるが、米国のE-2C Hawkeyや英、露の持っているような機種を保有していない。
ニ)空中補給能力や電子力戦闘能力などのレベルを高める必要がある。
ホ)空母をエスコートするための対潜水艦、対空防御能力は不十分である。
これに対し、政治・外交的に見て、この空母が持つ意味は何か。
中国は、やがて空母を持つ重みを周りに見せつけるようになるだろう。宇宙開発プログラムと同様に、中国の威信を高め、特に、競争者・日本に対しては、はるか先を行くとの印象を与えることとなるだろう。
南シナ海のスプラトリー諸島やスカーボロー礁をめぐる対立などについても、自らの制空力を及ぼすことが可能となろう。そして、東アジア沿海部から、太平洋、インド洋に至る海域において存在感をより強く印象付けるにちがいない。尖閣や南シナ海においては、まず、表向きには、漁船、漁船監視船など非軍事的手段を用いつつ、背後で、空母がそれらを支援するという形をとるだろう。