今後は、彼らに寄り添い、自然と導いていく姿勢が必要となる。自然と頑張ってくれる状況を作り、環境を設計する。まさに呪術廻戦の環境と同じである。無理にやっても逃げていく。逆に、昔なら働かなかった「自然な環境」を、提供するだけで頑張っていってくれる。彼らには多くは求めず、自然体の範囲でありのままのパフォーマンスを発揮していただこう。その中で、もし人のために自己犠牲が必要になるシーンがあれば、彼らは躊躇なく飛び込んでいってくれるのだ。
顧みると、まさに現代型の特攻隊、赤穂浪士といえるのではなかろうか。『鬼滅の刃』に話を戻しても、ネタバレになるために詳細までは触れないが、私が述べたいくつかの感動できるエピソードの中でも、まさにそのような自己犠牲のシーンが中心的役割を果たしている。
人との繋がりや、そこで扱われる公平性は、生存と等しい報酬
なお、科学的に理解しておくと良いことを述べておく。人との繋がりは、マズローの五段階欲求のような昔の定義だと、「社会的報酬」として、衣食住のような生きるための「一時的報酬」とはだいぶ乖離した高次のものと思われていたが、近年の研究によると、むしろ人間は「人の間」と書くように、そもそも繋がりこそ生存に必須であり、人との繋がりや、そこで扱われる公平性は、生存と等しい一時的報酬である。そのようなことが明らかになってきた。
この世代は、この本来の一時的欲求が自然と表層しているともいえるのではなかろうか(近年マネジメント論で流行の「識学」も、ここがベースになっている理論と筆者は見ている)。ちなみに、このように「スキ」を追求していく姿勢などは、同じく連載中の「2.5次元の誘惑」という作品にも多々表れていて、参考になると思われる。筆者もとても好きな作品なので、推薦させていただいた。
最後に、鬼滅と呪術を同じ流れの延長として述べたが、この作者お二人とも、まだ20代のまさにミレニアル世代。縛られていない、自然体な人柄が見て取れることで、それが作品に表れている、という点を付記しておきたい。両作品とも、巻中の様々な筆者コメントやコラムにそれが表れており、作品のもう一つの魅力となっている。