2024年4月22日(月)

Wedge REPORT

2021年8月25日

 海保の武器使用は、国内法の警察権に基づき、犯罪を制圧するために必要な範囲で実施されるが、海警局は自衛権に基づく「武器の使用を含めたあらゆる措置」であり、同じ武器の使用でも両者は根本的にまったく異質なものだ。しかも政府見解は、国際ルールに反する恐れが濃厚だ。海洋の国際規範である「国連海洋法条約」は、海警局の艦船のような政府公船は、軍艦と同様に国家そのものであり、「第3国の警察権を適用することはできない」と定めているからだ。

 このため海保法も20条で、取り締まりの対象となる外国船舶について「軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶で、非商業的目的のみに使用されるものを除く」と明記している。つまり外国の軍艦や政府公船に対し、警察権で対応するには限界があり、実力を行使しようとすれば、国際法違反と指弾される危険性があることを、政治は認識する必要がある。ではどうすればいいのか。

日本の「有事」は戦争、それ以外は「平時」という異常さ

 目指すべきゴールに向けての第一歩は、海上保安庁の能力を中国海警局並みにすることだ。海警局並みとは、いつでも必要に応じて自衛権を行使し、海保が主権を守るための行動が取れるようにすることだ。

 実は中国の海警局に限らず、米国の沿岸警備隊(Coast Guard)も警察権に加え、度重なる領海侵犯や侵略などの主権侵害に対しては、自衛権に基づいて武器を使用し、武力で排除する権限と役割が与えられている。いわゆる準軍隊(Paramilitary)としての扱いであり、欧州を含めて沿岸警備・監視機関の国際標準といっていい。

 それを可能としているのは、国際法上、自衛権を行使するための要件は、国家または国民に対する「急迫不正の侵害」があること等とされ、仮に悪質な主権侵害が繰り返されれば、各々の国の政府は国家の危機と判断し、侵害の程度や状況に応じて、警戒監視のレベルから武力で排除するというレベルまで様々な行動が自衛権の行使として認め、各々の国内法で定めているからだ。そこには平時とか有事といった概念はなく、現実に起きている状況や事態に着目し、主権侵害は国家危機イコール有事と判断するのが一般的なシステムだ。

 ところが日本の場合は、憲法9条とそれに基づく自制的な国防政策により、「急迫不正の侵害」について、政府は過去の国会答弁で、「武力攻撃、すなわち我が国に対する組織的計画的な武力の行使があった場合」に該当すると極めて限定的に説明してきた。このため日本は自衛権発動のハードルが高く、武力攻撃(戦争)に限って発動されるシステムだ。


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