2024年4月13日(土)

Wedge REPORT

2021年8月25日

思考停止に終止符を打て

 これほど長期にわたって日本の主権が侵害されているにもかかわらず、その対応の主体をめぐって、「警察だ」「海保だ」「自衛隊だ」などと議論すること自体がナンセンスであることを、政治も国民も認識しなければならない。

 いまは何ができるのかを考えるのではなく、何をすべきかを考え、危機に対して国家の総力を挙げる。そして、持っている機能をフルに活用する。絶対に中国と戦う場面に至らないために、抑止力を最大限に高めることを考えなければならない。

 それができなかったのがコロナウイルスへの対応だ。パンデミックの到来に備え、10年前から、国家として備えるべき準備が示されながら、それを放置してきた。国家の危機を乗り切るために必要であれば、法改正や国防政策の変更を躊躇する必要などない。

 武力攻撃に至らない侵害への対応について、サイバー攻撃が示すように、現代の国際社会では、その必要性は急速に増している。指摘した平時の自衛権に基づく実力行使についても、同じ文脈の中で、国際法上許容される範囲で充実させることができるだろう。自衛権発動の要件変更に伴う法改正が終われば、実行部隊となる海保と自衛隊の連携、運用、訓練も切れ目のない対応に向けて整備する必要がある。

 もちろん、事態に応じて自衛権行使を可能とすることが優先順位の筆頭だが、政府は尖閣危機の原点を作った米国に対し、「尖閣諸島の領有権は日本にある」ことを、国際社会に表明させることを働きかけ続ける必要がある。尖閣諸島をめぐって「領土問題は存在しない」と繰り返してきた姿勢を改め、国際司法裁判所(ICJ)に速やかに付託することも選択肢の一つになるだろう。

 中国が気づくまでもなく、尖閣諸島は戦略的に極めて重要だ。日本の核心的利益であり単なる岩礁ではない。奪われてしまえば、沖縄・南西諸島、そして台湾に及ぼす影響は計り知れない。

 私は2001年、自衛隊幹部に同行して初めて尖閣諸島を上空から見た。そこで実感したことは、島があることによる領域の広がりだった。明治期から先人たちが移り住み、島を守ってきた。

 敗戦で島は米軍の管理となったが、返還後、日本は本来強めなければならない実効支配を、逆に弱め続けてきた。今これを改めなければならない。地球温暖化に伴う異常気象を観測する施設や機器を設置したり、地震計を置いたりでもいいだろう。実効支配に魂を入れなければならない。

 戦争への反省から、国交回復後は中国に配慮し、日本は自己抑制を繰り返してきた。しかし、尖閣危機のゴールは中国に指一本触れさせないことだ。そして絶対に日中間の戦にはしないことだ。中国が尖閣奪取の意志を明確にしてから30年、その間日本は、厳しい現実から逃避するかのように、「領土問題は存在しない」を繰り返し、思考停止に陥っていた。

 もはや残された時間はそう多くはない。尖閣危機に対する日本の本気を示す、いまが最後のチャンスだ。

   
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