2024年2月27日(火)

Wedge REPORT

2021年10月5日

良い人材を獲得できるのは
「次世代を育てられる企業」

 新型コロナの流行によるテレワークやオンラインの普及によって、業務の脱・組織化、デジタル化はさらに加速した。それらを踏まえ、令和の時代に即した人材育成について考えてみよう。まずは、従来の組織で暗黙知のように行われてきた「察する文化」に依拠した人材育成を、形式知化・体系化することだ。

 上司と部下の関係性でいえば、これまでは営業先へ移動する電車の中や、ミーティング後の雑談で自然と行ってきた業務の進捗確認やフィードバックが人材育成に寄与してきた。しかし、リモートワークが増えれば、そういった「隙間時間」の減少につながるため、その時間を代替する仕組みをいかに形成できるかが重要だ。同様に、中途採用者に対しては、人事・管理職が定期的に面談を行ったり、業務の標準化をすすめマニュアル類を整備する。あるいは、同時期に入社した中途採用者のつながりをつくったり、職場単位でメンター(相談役)を割り当てるなどの支援体制を整備することで、彼らの定着が期待できる。

 このように、業務の個人化が進むほど、管理者にはより高度なマネジメント能力が求められる。例えば、HRビジネスパートナーに代表されるように、事業部署に人事担当者を配置し、人事部と連携しながら管理職支援を行う仕組みを導入することも効果的だ。日本は外資系企業と比べて、管理職支援が極めて手薄である。

 さらに今後の日本企業に求められることはテクノロジーの進化に対応できる人材を受け入れ、育成する仕組みを整えることだ。

 国際的にみれば、まだまだ日本のデジタル教育は遅れているが、小学校では20年度からプログラミング教育が必修化され、コロナ禍では大学の授業もオンラインへと移行し、クラウドやチャットといったデジタルツールを当たり前のように活用している。次世代の若者にとって常識的なデジタル化にすら対応していない企業は、彼らの業務能力を向上させる土壌すら用意できていないことを意味する。

 終身雇用制度が揺らぎ、人材の流動化が進むほど、人を大切にし、人材育成の能力に優れ、より多くのスキルを得ることができると判断される企業だけが、採用競争力を高め、さらに良い人材を獲得することができる、という好循環を得られるのだ。テクノロジーや社会環境の変化はその速さを増すが、それに伴って組織を適応させていくことができる企業や経営者と、思考停止のまま従来のやり方に固執する者とで、今後、大きく明暗が分かれるだろう。経営者にとっても、従業員にとっても大切な企業を守り、発展させるためには変化に順応し、受け入れていくことが欠かせない。

 そのような時代に即した人材育成の仕組みを、企業外や社会の中に実装していくことも必要だ。その一例が、教育と就労を交互に繰り返す「リカレント教育」の普及だ。筆者は立教大学経営学部で人材開発・組織開発の分野における高度専門人材を育成するカリキュラムを開講しているが、生徒は40代~50代で、企業のマネジメント職に就いている者が多い。彼らは普段、週末の授業で学んだ人材開発・組織開発の知識を生かして、平日、事業部の組織課題のデータ分析を行ったり、組織を対象にした調査を行ったり、ワークショップや研修を行っている。学びと実践を交互に繰り返すことで、高い学習効果をあげることができるのだ。

 このように、日本全体として人材を育てていく仕組みを整備し、発展させていくことで、日本企業の国際的な競争力が高まり、われわれの生活もより豊かになるはずだ。

 Wedge10月号では、特集「人をすり減らす経営はもうやめよう」を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンでお買い求めいただけます。
 
 

   
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Wedge 2021年10月号より
人をすり減らす経営は もうやめよう
人をすり減らす経営は もうやめよう

日本企業の“保守的経営”が際立ち、先進国唯一ともいえる異常事態が続く。人材や設備への投資を怠り、価格転嫁せずに安売りを続け、従業員給与も上昇しない。また、ロスジェネ世代は明るい展望も見出せず、高齢化も進む……。「人をすり減らす」経営はもう限界だ。経営者は自身の決断が国民生活ひいては、日本経済の再生にもつながることを自覚し、一歩前に踏み出すときだ。


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