2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年12月24日

 フルシチョフがスターリン批判をし、ゴルバチョフがペレストロイカを始めた例もある。ニューヨーク・タイムズは、広州の書記の王洋に注目している。彼は、リベラルな改革者として期待されている。しかし、その彼も薄煕来事件以来発言していない。韜晦しているのかもしれない、と述べています。

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 ジェローム・コーエンは1930年生まれで、大躍進、文化大革命、改革開放、天安門事件、愛国主義運動、鄧小平主導の経済的軍事的発展のすべてを見て、すべてを論じてきた人です。この記事は、インタビューに答えたものでもあり、現在の中国共産党内部の事情について、いわゆる専門家的解説を加えるのでなく、内情は何もわからないと言いつつ、中国の将来に希望無きにしも非ずと、大局的、歴史的見地から、何十年もの経験に基づく、含蓄のある長期的な判断を述べているわけです。

 90年代、2000年代は、中国の体制は長くは持たないという議論に対して、中国が経済成長と軍事力拡大を続けていく危険について警鐘を鳴らす必要性が、今以上に強くあったと言えるでしょう。ただ、最近は、中国もついに曲がり角に来たようにも思われます。

 経済についても、一度は停滞しても、まだまだ成長余力(換言すれば低賃金)があるので、近い将来の破綻は期待すべきでないと考えられてきましたが、薄煕来事件以来、中国共産党からは、清廉、無私な人民の党としての正統性が失われてしまったので、今後一時的にでも経済成長が止まると、今や高度成長と国威の発揚だけに正統性を有する現体制に、政治的危機が訪れる可能性も否定できません。

 万一そうなった場合、それが、一部で言われているような、毛沢東主義復帰なのか、ゴルバチョフ的改革なのかは、現時点では分かりません。

 ただ、フォーリン・アフェアーズ誌9/10月号で、共和党大統領候補ロムニーの外交政策顧問も務めたアーロン・フリードバーグが言っているように、欧米の経済はやがて回復し、中国経済は何時か壁に突き当たろうが、それまでの時期、つまり現在からそれまでの何年間かが最も危機的な時期である、という判断は、傾聴に値すると思われます。

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