2024年11月25日(月)

Wedge REPORT

2012年12月27日

現実は厳しいけれど充実した毎日

 リサーチの結果、高付加価値と環境配慮を打ち出せば、日本市場で勝負できると判断。退職して起業を決めた。ラオ・アグロオーガニック&ディスティラリー(LAODI:ラオディ)」社http://www.laodi.jp/を07年に設立した。

 22ヘクタールの用地開墾とプラント建築費を合わせて約6000万円の投資となった。共同事業者として高校の同級生2人と富田さんの兄及び兄の友人が資金を出し合ったほか、「サトウキビクラブ」と名付けて寄付金を募り27人の会員を得た。

 ラム酒の製造技術については日本にはまとまった情報がないため、いくつかの県の技術センターへの相談や焼酎工場見学などで調査・収集し、タイの焼酎蒸留所でも実習するなどして試作生産を開始した。

 サトウキビ本来の香りや日本人好みの味わいが残るように、搾り方、発酵の方法、蒸留方法を試行錯誤し、独自性のある酒の創出に2年かけ、09年に初出荷に漕ぎ着けた。

 サトウキビは農薬を使わずに栽培するため、雑草の処理や刈り入れには人手がいる。常時、従業員を15~20人雇用し、酒の生産期には35人ほどになるが、国民性の違いに戸惑うことは今もある。「規則に縛られない気質ですから、お祭りの翌日など、お酒を飲みすぎて平気で欠勤する。習慣・常識の違う彼らと一緒に仕事をしていくことは大変です」。

 現在は700ミリリットル換算で年間2万本を生産している。販売先の8割は日本で、残りがラオスとベトナム。「計画通りの売上に達していないため、業績はまだまだ厳しいですが、ブレイクイーブン(収支均衡)まであと少し」と、状況の厳しさを口にしつつも、富田さんの表情からは充実感がうかがえる。日本にいるときは酒販店や飲食店へ「飛び込み営業ですよ」と笑う。

◆WEDGE2013年1月号より

 

 

 

 

 

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