米国、カナダ、メキシコ3カ国は、新型コロナ対策、これによる北米市場でのサプライチェーンの乱れ、更には、移民問題や気候変動問題など協力して取り組むべき諸問題に直面している。
11月18日に5年ぶりで開催された北米首脳会談は、3国首脳にとって、内外に連帯を示す演出として共通の利益でもあったといえる。特に、トランプにより中断されていたこの首脳会議を復活させることは、「外交が戻ってきた(Diplomacy is back)」と宣言し同盟国との関係を修復すると公約しているバイデンにとっては、特に象徴的な重要性を持つイニシアティブであった。
首脳会談では、ワクチンのラテンアメリカ諸国との共有、サプライチェーンの強化に関する作業部会の設置、温室効果ガスの削減目標強化の確認などの成果があったが、他方、米国の自国産電気自動車に対する税控除問題や、メキシコのエネルギー政策や気候温暖化防止への対応、メキシコ国境における移民の取り扱い、米加間の酪農製品を巡る問題など、ハードコアの難問はほとんど取り上げられなかったとされる。
これらはそう簡単に解決する問題ではないので、失敗は許されない今回の首脳会談において、米国側が難しい議題を避けたことは無理からぬことであったと言える。
それにしても、ホワイトハウスのサキ報道官が米国産の電気自動車に対する優遇措置をクリーンエネルギー普及に向けた消費者措置で何ら問題はないかのような説明をしたことは、今回の首脳会談の成果が如何にも表面的であったとの印象を強めた。この措置は、米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)に違反するのみならず世界貿易機関(WTO)の内外無差別原則との関係で問題であろう。
ワシントン・ポスト紙の11月20日付け社説は、この問題で米国政府に再考することを求めているが、極めて正論であり、さもなければトランプと同様、国際協定も無視する自国ファースト主義と変わらなくなってしまう。
他方、メキシコのロペス・オブラドール大統領は、首脳会談に際して、移民を拒絶すべきではなく経済成長に必要な労働力を強化する可能性を秘めていると述べ、また、不法移民に市民権を付与するバイデンの構想を礼賛しつつも米国議会が賛成することを願うなど述べ、バイデン政権を牽制するような発言をした。