(出所)ウェッジ作成
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10年度─。ひとつの疑問がわく。いまでこそFITは電源種別・規模別に、コストに見合うよう細かく買取価格が設定されているが(後篇の表参照)、これは菅直人首相(当時)が退陣条件にFITを挙げ、脱原発の機運を受けた国会議論で大きく法案が変更されてからのことだ。
グリーン発電会津が補助金を申請した10年12月当時、大詰めを迎えていた経済産業省の審議会で検討されていたFITの買取価格(発電側から見ると売電価格)は、15~20円という一律価格である。会津のプラントは32円ではなく、20円の買取価格で事業が運営できるよう設計されていたはずなのだ。実際、補助金の申請書面に記載されている年間燃料費は4・96億円。年間6~7万トンの未利用材を用いる「山林未利用材専焼発電所」とあるから、上限8300円/トンのチップ価格を想定していた計算になる。
8300円がいつのまにか12000円になり、しかし実際は山側に5000円しか還元されていない。いったいどうなっているのか。
チップ価格 不透明な説明
取材班はグリーン発電会津の齋藤大輔社長と、11年3月まで社長を務めていた滝澤誠氏を直撃した。
齋藤氏は、素材生産からチップ加工まで手がける県内有数の林業企業ノーリン(福島県喜多方市)の専務であり、その子会社である運送企業ノーリンエクスプレスの社長も務める。報道によればグリーン発電会津の93%の株もノーリンが有している。滝澤誠氏はバイオマス発電に長く携わってきた人物で、全国の林業会社経営者と木質バイオマス発電を普及させようと設立したグリーン・サーマル(東京都港区)の取締役を務める(7月まで社長)。ノーリンが資金とチップの収集・加工・運搬ノウハウを、滝澤氏がバイオマス発電のノウハウを持ち寄ったのがグリーン発電会津だと言えよう。
グリーン・サーマルは会津モデルを全国に展開する考えで、すでに日田(大分県)と奈良に発電事業会社を設立している。
32円の買取価格は、FITの買取価格を決める調達価格等算定委員会が、事業者ヒアリングを参考に決定したものだ。4月に開かれた同委で、滝澤氏は業界代表として意見を述べた。未利用材専焼は会津だけだったからだ。滝澤氏はこう述べた。
「調達コストは未利用木質バイオマスがトン当たり12000円(中略)、シミュレーションの結果、買取単価は31・8円という価格が適正と想定しております」
齋藤、滝澤両氏は、12000円と8300円の間には齟齬がないと説明する。「未利用材は12000円だが一般材は7500円。水分率を調整するとそれぞれ10500円と6500円。平均8500円で8300円とそう変わらない」。