2012年7月。福島県会津若松市の小高い丘にある工業団地の一角で、関係者の期待を集める発電プラントが運転を開始した。
山林未利用材を専焼燃料とする全国初の木質バイオマス発電所で、グリーン発電会津が運営する。発電規模は5700kWと小ぶりだが、周囲40~50キロ圏から年6万トンもの木材を集める。夜間も灯りがともり、地元では不夜城とも呼ばれている。
日本の森林は毎年8000万立方メートル増えているが、材として搬出されているのは年2000万立方メートルに過ぎない。安い輸入材に押されて国産材需要は低迷。スギの価格は1立方メートルあたり1万円程度と、最盛期(1980年)の4分の1まで下がったからだ。山林には大量の未利用材が残されている。人工林は放置すると荒廃するため、林野庁は間伐(間引き)に補助金を出しているが、伐った間伐材のほとんどは山林に放置されている(伐り捨て間伐)。
盛り上がらない林業事業者
7月から始まった再生可能エネルギー固定価格買取制度(Feed-in Tariff、以下FIT)では、未利用材を燃料とするバイオマス発電には32円/kWH(税抜)という高い買取価格が設定された。この価格を決める最大の要素が、燃料となる木材チップの価格。山林に残された未利用材を搬出するには手間がかかる。燃料チップ価格は12000円/トンと、スギの市場価格とそう遜色ない価格がつけられた。
いままで山に捨てるしかなかった木が商品になるのだから、さぞ地元は盛り上がっているだろうと、取材班は会津地域の素材生産事業者(森林組合など木材を伐採、搬出して流通側に渡す事業者)を回った。しかし、返ってきたのは「山にお金は大して還元されない。あれで6万トンも集まるだろうか」という反応だった。
それもそのはず、取材班が独自に入手した書面によると、素材生産事業者に提示されている価格は5000円/トン。チップ加工代や運搬費がかかるとしても、12000円とはあまりの開きだ。「未利用材は搬出に手間がかかるのに、これではコスト割れだ」との声も聞かれた。
さらに調査を進めると、この発電プラントは、10年度の補正予算で農林水産省から9・5億円の補助金を受け取っていることがわかった。「資源循環型地域活力向上対策事業」として、設備投資の半額補助、名目は雇用対策である。