「保険」と「税」の機能分け
年金制度の防貧機能を維持せよ
まず、年金制度の改革案だ。財政再建は不可避だが、それだけが目的であってはならない。日本の年金制度が抱える課題は「急増する貧困高齢者への対応」と「世代間格差の改善」であり、これらの課題も同時に解決する制度的な「仕掛け」の確立が急務だ。
解決に必要なのは、①公的年金の1階部分(基礎年金)を完全に税方式化し、②公的年金の2階部分(報酬比例部分)を保険料で賄う「積立方式」に移行する改革案だろう(下図参照)。
そもそも年金の本来目的は寿命の不確実性に対する「リスク分散機能(保険)」だが、労働所得を失った高齢者の防貧機能も果たすため、公費投入による「再分配機能(税)」を備えている。改革には哲学も重要で、公費投入を抑え、かつ両者の機能を生かすにはそれぞれの機能を切り分け、裕福な高齢者の基礎年金部分への公費投入は一部カットし、公費は本当に困っている高齢者(資産も少なく低年金や生活保護水準の者)に集中投下すべきだ。
04年に導入された「マクロ経済スライド」(現役世代の人口減少や平均余命の伸びに合わせて年金の給付水準を自動的に調整する仕組み)によって年金の給付水準は徐々に低下する。当初の予定よりも調整が遅れており、現役世代(男性)の平均賃金と比較して、基礎年金が将来的に約3割も目減りする可能性が高い。これは現在の基礎年金(満額で月6.5万円)が約4.5万円に低下する感覚で、低年金の高齢者が急増する可能性を意味するが、その救済のためにも①の改革が必要となる。雇用期間の延長や資産運用などによる貯蓄(私的年金)も重要だが、そういった自助機能を備えられなかった高齢者の貧困が一気に加速する可能性も高い。
解決策(①)で問題なのは財源だが、…………
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