2024年11月22日(金)

安保激変

2013年2月7日

 特に、米国の政治アナリストを当惑させているのが共和党側の姿勢の大きな変化だ。これまで共和党といえば、民主党に比べて国防省や軍のニーズに同情的で、国防費に手厚い政党というイメージが持たれていた。また、政府の歳出削減という「総論」には同意しても、国防費を削減対象にすることについては躊躇する雰囲気も実際に、根強く存在した。

予算圧縮を目指す茶会運動議員の強硬姿勢

 ところが、2010年の中間選挙で「小さな政府」を強く志向する茶会運動からの支持を基盤に当選した議員が共和党内で多数を占めるようになったあたりから、国防費も含めた連邦予算全体の圧縮を目指す動きが強くなり、またそのためには妥協を一切しない強硬な姿勢が目立つようになってきたのだ。彼らにとっては、予算の一律10%カットにより、国防の現場で「ヒト・モノ・カネ」の大混乱が生じたとしても、「それにより、さらなる無駄の洗い出しにつながるのであればそれでよし」ということらしい。

 このような事態を受け、これまで「sequestration が発動された場合の措置については考えていない」という姿勢を崩さなかった国防省も、方向転換せざるを得なくなり、今年の1月、カーター国防副長官の名前で国防省全体に対して予算が大幅に削減された場合に備えるよう指示する書簡を出した。

 この書簡の中では「2013年度予算可決までの道筋が見えないこと(注:昨年来の財政再建案を巡る議論の膠着により、2013年度予算は未だ可決されていない。連邦政府各省庁は前年度水準の予算で活動を続ける旨が「継続決議」という立法措置で認められているが、その期限も今年の3月27日に迫っている)」「sequestrationが回避できない可能性があること」が「予算上の二大不確定要素」として列挙されている。そして、そのような状況の中で航空機や艦船および米軍施設のメンテナンスの中止・延期、短期契約職員の雇用の凍結、会議・出張の圧縮など、当座のコスト減に関する指示を出している。

「いかに同盟国に応分の負担をしてもらうか」

 さらに、最近では「強制削減は回避できたとしても、国防費は、現在国防省が想定している以上、削減されるだろう」という見方が定着しつつある。実は、2010年ごろから戦略予算評価センター(CSBA)のアンドリュー・クレピネビッチ所長や、スティムソン・センターのゴードン・アダムス特別研究員は、「イラク・アフガニスタンでの戦闘を終え、国防予算は収縮期(drawdown)に入っている。」「第二次世界大戦以降、大きな戦闘を終えると国防予算は約30%前後削減された。今回もその程度の規模の予算削減は予期すべきだ」という論陣を張っていたが、彼らの議論にその他の人々の認識が追い付いてきた感じだ。


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