2022年12月4日(日)

バイデンのアメリカ

2022年2月23日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 同事件に関しては昨年秋にも、トランプ氏側が議会調査当局から提出を求められていた在任中の電話会話、執務関連文書の提出を「大統領特権」を理由に拒否していたが、バイデン大統領はこれを却下。ホワイトハウス事務局に対し、議会への提出決定を下した。トランプ氏側は不服として、連邦地裁に差し止め請求したが、敗訴している。

 連邦議事堂乱入・占拠事件を重大視する民主党陣営は、ホワイトハウスが昨年の決定に続いて今回も、追加証拠の提供に応じたことで、議会での調査に一層はずみがつくことを期待しており、とくに中間選挙で苦戦が予想される民主党下院議員の多くは、出来るだけ真相に迫る内容を盛り込んだ議会調査最終報告書を、遅くとも9月ごろまでには公表するよう求めている。トランプ陣営による「民主主義破壊行為」を広く国民の前にさらすことにより、少しでも民主党に有利な世論喚起につなげる狙いがある。

明らかになるトランプ一族の不都合な真実

 一方、長年にわたり、トランプ氏が所有する不動産会社「トランプ・オーガニゼーション」の経理関係監査を担当してきた大手公認会計事務所「Mazars(メイザーズ)」が今月初め、同社に対し、関係打ち切りを通告してきたことが明らかにされた。トランプ氏にとっては、さらなる打撃だ。

 米主要メディアが去る15日、一斉に報じたもので、それによると、ニューヨーク州司法当局はこれまで、トランプ・ファミリーの土地売買などをめぐるいくつかの不正取引、税処理に関し広範囲の調査に乗り出していたが、会計処理の説明を求められて答弁書を作成してきたメイザーズのウィリアム・ケリー代表がその後、「過去10年近くにわたるトランプ・オーガニゼーションに関する(同事務所の)財務内容報告はもはや信頼に足るものではない。これらの報告を受け取ってきた当事者も、取り扱いには注意が必要」などとする書簡を法廷に提出した。

 その上で、「まごうことなき利害の不一致により、従来通りの監査担当業務の継続は困難になった」として、今後、トランプ・グループとの関わりに終止符を打つことを明らかにした。

 同州司法当局はこれまで、トランプ・ファミリーが①ウェストチェスター郡セブンスプリングズの広大な遊休地、②マンハッタン地区内のトランプ・タワー、③同トランプ・パークアベニュー、④英国スコットランド所有のゴルフ・リゾート、⑤ウォール街オフィス・ビル――などの不動産物件に関し、金融機関、保険会社に「不正確、誤った情報」を提出してきたとして、多くの関係者から事情聴取してきた。

 さらにはこの関連で17日、ニューヨーク州地裁は、トランプ前大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニアおよび長女イバンカ両氏に対し、州検察局が求めている宣誓証言に応じるよう命じた。これまでも調査協力を拒み続けてきた両氏側は、これを不服として控訴する方針である。

 州司法省による調査とは別に、トランプ疑惑をめぐっては、ニューヨーク・マンハッタン地検特捜部(アルビン・ブラッグ主任検事)が、刑事訴追を視野に、トランプ本人、家族周辺の過去のビジネス取引について脱税容疑関連で本格的捜査に乗り出している。

 このため、メイザーズのとった今回の異例の措置は、今後の捜査の展開次第で監査上の刑事責任を問われることを事前回避する狙いがあるとみられている。

 また、メイザーズだけでなく、大統領退任後、トランプ氏側とのこれまでの関係を打ち切る主要銀行、弁護士事務所、コンサルタント会社も相次いでいる。

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