――道具としては3Dプリンタや3DCADなどのソフトがありますが、そもそも3DCADとはどのようなものでしょうか?
水野氏:簡単に言うと、コンピュータの中にバーチャルな物体を描くソフトだと考えてください。今までモノづくりの設計では、上面、正面、側面を描いた3面図などが使われていました。ですが、3DCADなどのソフトを使えば、初めから3次元の情報が得られるのです。
――3DCADなどのソフトウェアでつくったデータを3Dプリンタで出力するのでしょうか?
水野氏:今までの製造業では、3Dソフトでデータをつくったら、そのデータを製造部門に渡し、製造部門で切削加工して試作部品を作ったり、量産するのであれば実際に金型を作っていました。しかし、3Dプリンタの出現により、産業で使っているのと同じデータを3Dプリンタが受け取り、立体物をプリントするのです。
――特に最近テレビや雑誌などで3Dプリンタを目にしますが、かなり普及は進んでいるんですか?
水野氏:実は3Dプリンタ自体、古くは1990年代初頭から存在する決して新しい機械ではないんです。表立っては言いませんが、自動車会社などでは以前から製造設備として使っている会社もあります。ただ、90年代初頭は1台1億円もする高価な機械でしたから、そういったものが買える自動車会社や自動車の試作を作るサービスビューロと呼ばれる試作会社しか使っていませんでした。
ただ、最近では個人用のホビーユースとしてなら1台10万円~20万円といった手軽なものまで出ています。
――3Dプリンタを使用する利点とは?
水野氏:産業面だと間違いなく試作です。これまでのように図面を作成し試作をするとなると実物をつくってみないとわからないことが多かった。しかし、3DCADを利用することで、画面上というバーチャルではあるがモノの全体を確認することができるようになった。そういった意味では、いちいち試作をつくらなくても良くなりました。
ただ、画面上な上、バーチャルでしかないので、握った感覚などは実際に立体物を作ってみないとわからない。そこで3Dプリンタの出番になる。これまで産業用途で試作を作るときには、ひとつだけ試作品を作るわけではなく、設計者が試作案を数種類用意し、それを外部の技術者へ発注する。そうすると自ずと時間もコストも掛かってしまう。試作品が完成するまで大体1週間ほどです。それが3Dプリンタを利用することでデータを渡した翌朝には出来ている。