「Wedge」2022年3月号に掲載され、好評を博している特集「魚も漁師も消えゆく日本 復活の方法はこれしかない」記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(
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漁業と養殖業は、ノルウェーにとって成長産業である。ノルウェーでは水産資源は「国民の所有物」であり国が管理している。水産資源管理は、科学的根拠に基づいて行われている。国際的な水産物の需要増加と、それに応えられる持続可能な水産資源は、国内産業と地域産業に大きく貢献している。
2021年、ノルウェーの水産物の輸出額は1208億ノルウェー㌛(約1.5兆円)と過去最高となり、300万㌧以上の水産物が、150近くの国々に輸出された。ノルウェーの水産物輸出金額は中国に次ぐ、世界第2位である。ノルウェー水産物審議会(NSC)は自国水産物の需要と消費の拡大を担っている。
ノルウェーの水産物輸出には長い歴史がある。12世紀から主に干しダラや塩ダラとして輸出されたノルウェー産マダラは、最初の国際貿易商材の一つであった。今日でも世界各地でその痕跡を見ることができる。たとえばフランス中央部の小さな鉱山の村では、北極圏に位置するノルウェー北部ロフォーテン諸島から輸入された干しダラの記憶の証として、タラの乾燥機が取り付けられている。この小さな村での大きな祭典では、ノルウェーからの干しダラを〝良いワインができた〟というシンボルとして見なしている。その村のワインは河川輸送で仏西部のボルドーまで運ばれ、ワインとノルウェーの干しダラが取引されていたのである。