総需要、一人当たり消費量は減り続ける
全体としての米について、まず、需要量・消費量の減少の推移を押さえておきたい。総需要のピークは1963年の1341万トン、2020年は813万トンだから4割の減少である。一人当たり消費量のピークは1962年の118キログラム、2020年は51キログラムだから6割近い減少であった。ちなみに、3月2日発表の農水省の予測では、計算上は、コロナ後に米の総需要が約7万トン戻って702万~709万トンとの試算もある(小麦は561万トン、国産100万トン、輸入451万トンと見通している)。
この背景については、さまざまな説明がなされてきた。「人口減少と少子高齢化が原因」、「総需要の減少は価格のせいではない。米は主食であり、価格弾性値は小さく、価格水準に関係なく消費される」、「需要減少のトレンドは年間8万トン(最近は10万トンとも)、これに対応した生産が必要だ」などである。
しかし、需要と価格の関係を測る「価格弾性値」については、すでに、2002年、09年の研究会やシミュレーションによって、「米の需要は価格変動に従って変化することに加えて、実質賃金の上昇率と世帯規模という2つの変数によっても変化する」と解説されていて、市場と価格を軽視した商品は競争に敗れる運命にある。
コロナで需要が増えた食品、減った食品
ここ1年間ほどの新聞報道などから見える食品消費の姿をピックアップした。
① 内食が進んだが、自炊疲れも見られ、簡便性のある加工・調理食品に存在感。
② 冷凍調理食品、弁当、寿司、調理パン、食パン、麺類は「コロナ前より増加」。
③ コメ消費は簡便シフト化が鮮明―パック飯、冷凍米飯、レトルトはは最多の増。
④ 売上金額の伸びが大きい食品―オートミール、麦芽飲料、栄養バランス食品。
⑤ 期待されるコメ消費―アウトドア飯、ファストフードの米メニュー。
⑥ 中高年ほどコメを食べない。若い世代は、米を食べるまでに負担感―炊飯や買物が面倒、コンビニで購入。
⑦ 一般家庭におけるコメの月間支出額は、10年前にパンに抜かれ、20年前には米の半分だった麺に追いつかれている。炊飯不要、簡単調理、宅配食という利便性に押されている。
⑧ コロナ禍で外食・中食のコメ需要が大幅ダウン―マクドナルド、モスバーガー、ケンタッキー・フライド・チキン、餃子の王将など、テイクアウトは増額。
⑨ 米の弱点は「素材そのものを食べること」、麦は「パスタ、ピザ、ラーメンなどに形を変えている」。
⑩ なにもしなくてもコメは食べられてきたが、「食が多様化する中で、差別化しないと生き残れない」「パン・麺業界は攻めている」「カップヌードルは<完全栄養食品>を目指す」―電子レンジを前提として、早やゆで、容器付き、ソース付きパスタなど。
⑪ 米の弱みに見える点も、実は強みにも―グルテンフリー、ビーガン。
ここから分かることは、今の日本人の多くが「自宅では毎日ご飯は炊かない」ということだ。昔は、夫婦共働きの江戸、大坂の職人たちの家では、2食分を炊いて朝夕に食べて、日中の職人は屋台などでファストフードを利用していた。
そして、いま、米は家庭で食べるものとは限らず、外・中食のウエイトは高まりつつある。作れば売れた「主食」の時代はとうに終わり、「何をどこで食べるか」、消費者志向をしっかりとらえなければならない。