お花畑の農業論にモノ申す

2022年1月7日

»著者プロフィール
著者
閉じる

熊野孝文 (くまの・たかふみ)

元米穀新聞記者

1954年生まれ。東京経済大学中退後、コメの相場情報として米穀市況を速報する仕事に8年従事し、米穀新聞の記者として農家と卸売業者、小売店と、それぞれが取引する現場を40年取材してきた。近書に『ブランド米開発競争―美味いコメ作りの舞台裏』(中央公論新社)。

 清酒、焼酎、ビール、みりんなどの醸造用から味噌、米菓、和菓子、餅といった幅広い加工食品まで、原料として使用されるコメ。だが、こうした加工食品業界でどのような種類のコメが使用されているのかはあまり知られていない。それぞれの業種で求められるコメ(以下、原料米)の種類も違い、品位のレベルも幅広いため、流通実態は実に複雑である。

(shinji/gettyimages)

低品位米に付加価値を付ける精米

 共通点を挙げるとすれば、いずれの業種も価格の安い原料米を求めていることである。そうした需要者のニーズに応えるべく、玄米の外皮を取り除く搗精(とうせい)や独特の選別手法によって、低品位米を価値ある原料用精米として供給し続けているところがある。

 原料用米搗精業者である。

 粒が小さかったり割れたりして主食用に向かない特定米穀いわゆる「くず米」を搗精し、それぞれの用途にあった製品に仕上げ、低廉な原料米商品として提供し続けているのだ。その原料米搗精業者で組織される全国団体「全国米穀工業協同組合(全米工)」が仕入れた原料米や製品白米を取引する際に画期的とも言うべき画像データを活用した取引をはじめている。

 この取引手法は将来的には原料米に限らず、一般の主食用米にも活用できるため、コメの取引形態そのものに変革をもたらす可能性がある。

飼料用米作付けで手取りが上がる歪な補助金制度

 表は、コメ加工食品業界がうるち米、もち米ごとに業種別、制度別に使用されている数量を農林水産省が調べ公表したものである。

 農水省の制度区分では、主食用米と主食用でないものを区分している。これは生産調整を実施する際に飼料用、加工用、米粉用、新規需要開拓(輸出用)を作付けすると、「主食用米から転作したもの」とみなされ、転作助成金が支給されるからである。

 その助成単価は極めて高額であり、飼料用米を作付すると10アール当たり最高10万5000円が支給される。仮に10アール当たり10俵の飼料用米が収穫されたとすると、1俵1万500円の助成金が支給されることになる。これはあくまでも国からの直接支払われる助成金であり、産地ごとの独自助成金や販売代金を加えると、主食用米を作るより生産者の手取りが高くなる。

関連記事

新着記事

»もっと見る