2024年11月22日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年1月7日

 農水省は、2022年(令和4年)産米で主食用米と飼料用米を作った場合の生産者手取りのイメージを作成しているが、なんと飼料用米を作付した方が主食用米に比べ10アール当たり3万円、10俵収穫されたとすると1俵3000円も手取りが良くなる。転作助成金は年々増加し、年間3400億円という巨額なものに膨らんでいる。

原料米流通の3分の1を占める加工米

 話が横道にそれてしまったが、加工用米、米粉用米にも助成金が支払われており、米粉用米の助成単価は飼料用米と同じだが、加工用米はそれよりも安く10アール当たり4万円である。ただ、転作作物扱いになるこうしたコメは、産地側の裁量で別途決められる助成金もあり、一律ではない。

 4年産の10アール当たりの所得イメージだけ示すと、主食用米が11万2000円であるに対して飼料用米(多収)が14万1000円、加工用米10万6000円、新市場開拓米(輸出用米)11万8000円といった具合である。

 本題のコメ加工業界に供給される加工用米は表に示してあるようにうるち米が22万トン、もち米が5万トンで合計27万トンになり、外国産米や特定米穀も含めた全体の原料米使用量が95万トンなので、加工用米は約3割弱を占めていることになる。加工用米の次に使用量が多いのが特定米穀で、その次が外国産のミニマムアクセス(MA)米。この3つは価格面で競合関係にある。

外国産米によって価格は大きく変動

 これら制度別の原料米の競合関係で最も強く影響するのが〝価格〟だが、清酒原料米は、清酒を製造するのにふさわしい酒造好適米といったものもあるため、ここでいう原料米の競合関係についてはいったん清酒原料米を除くことにする。

 原料米の価格面で使用量が大きく変化する業種の筆頭は味噌業界である。味噌業界は年間約8万トンの原料米を使用するが、国産米(特定米穀、加工用米)とMA米の使用比率は価格によって大きく変動する。年によって国産米が値上がりすると、国産米の使用量を減らして3万トン程度に留まり、その分外国産米の使用量が5万トンになったりする。反対に国産米が値下がりすると国産米の使用量と外国産米の使用量が反転する。

 米菓業界も同じような傾向があり、年間うるち米を13万トン、もち米を6万トン使用するが、うるち、もち米とも外国産米の使用もあり、どちらを使用するかは価格によって大きく変動する。

 そのMA米は国家貿易品目であるため、国が売却価格を決め、入札方式で味噌、米菓業界などコメ加工食品業界に売却する。売却方法は単月売却の他に3カ月間の長期売却がある。コメ加工食品業界は仕入計画が立てやすい長期売却で買受ける数量が圧倒的に多い。その長期売却の22年1月~3月分の入札が21年12月17日に実施されたのだが、なんと米国産うるち精米が1トン当たり2万2000円値上がりして14万9000円に跳ね上がった。

 これほどまでに売却価格が上昇した理由は、米国カリフォルニアでの生産量減少もあって米国内で価格が上昇、輸出価格も値上がり、それに円安も加わって輸入単価が上がったことにある。コメ加工食品業界では落札できなかった業者も多く、業界団体は「あまりにも急な値上げは原料米の安定調達に支障をきたす」とし、農水省に売却価格急変動の是正を求める要請を行うことにしている。


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