2024年6月17日(月)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年1月7日

 MA米の売却価格変動の影響を最も強く受けるのが国産特定米穀で、加工用向け特定米穀の精米価格はMA米の価格とパラレルな関係にある。もちろん特定米穀それ自体の供給量によっても価格が変わってくるが、供給量は生産年にどれだけくず米が発生するかによって変わってくる。

 表は令和に入ってからの水稲生産量と特定米穀の発生量を示したものだ。こうした数量が分かるようになったのは農水省が玄米とくず米を選別する米選機、ライスグレーダーによる網目別生産量を調査し始めたことによる。ここまで細かな生産量統計を取っている国はないが、要は未熟粒など一定の基準よりも粒の小さい篩(ふるい)下米がどのくらいあるのか統計数値として出せるようになった。

 表で明らかなように、篩目1.85ミリ未満の特定米穀は年間50万トン程度発生している。こうした特定米穀を精米製品に仕上げるためには、それ専用の選別機や搗精機が必要になる。こうした精米工場を有している企業で組織されるのが全米工である。     

コメの品質を画像で示す新しい取引形態

 その全米工は毎月、東日本(東京)と西日本(大阪、名古屋、福岡)で情報交換会と席上取引会を開催している。ところがコロナ禍で会場に集まることが難しくなってしまった。

 そこで会場に集まらなくても情報交換会や席上取引をできるようにした。情報交換会は各地にいる組合員とオンライン形式で可能だが、席上取引は文字通り会場に集まって特定米穀のサンプルを見ながら取引しなくてはならない。特定米穀という商品の特性上、一般主食用米のように産地銘柄別に等級格付けしているわけではないので、会場でサンプルを見て買い手が価値判断する必要がある。

 そこに登場したのが新型穀粒判別器で、コメのサンプルを画像解析してその品位をデータとして示すことができる。トレーに1000粒程度のコメのサンプルを乗せ、機械に差し込むと1分もしないうちに一粒一粒の長さ、幅、面積が計測でき、グラフとして出てくる(写真)。測定項目はそれだけではなく、一粒一粒の着色や乳白、胴割れの程度も判別でき、それらの被害粒が色分けして表示されるという優れた機能を有している。

(筆者撮影)

 これによって画像解析したサンプルの品位がデータとして確認できるようになった。取引会の参加者は会場に行かなくても自社事務所でパソコンやスマートフォンを見ながらサンプルの品位を確認できるため、オンライン上で売り買いが可能になった。つまりコメの取引が画像データだけでできるようになったのだ。取引が初めて成約したのは21年6月に名古屋市で行われた取引会で、コメの取引を画像データで成約した世界で初めてのケースであるということができる。

変わる商談、求められる自由でオープンな市場

 穀物の取引が画像データでできるということが実証されたという意味で画期的な出来事だが、この画像取引はシステム化すると原料玄米の画像データから精米製品にした段階のグレードも分かるようになるため味噌、米菓などコメ加工食品業界が求める品位の精米製品を原料米搗精業者が画像データとして提供できることを意味する。これまで原料米搗精業者はコメの需要者と取引する際は、自らの工場で精米製品に仕上げたサンプルの現物を持ち込んで商談に臨まなくてはならなかったが、新型穀粒判別器を活用して画像データとして提供し商談が可能になる。

 コメによる加工食品は、農産物の付加価値向上に寄与する。消費が減り続ける主食用米を補填するものとも期待され、国が進める輸出拡大にも貢献し得るだろう。外国依存で価格に苦しむこともなくなる。

 加工食品のためのコメという産業を育成していくには、生産調整のための転作助成金という形だけを続けるべきではない。加工業界が求める国産米の生産が拡大するようにし、さらに新型穀粒判別器という新たな技術を活用、スピーディに需要者に届けられるように流通を簡略化することである。とくに重要なことは需要者が望む原料米が供給者側とマッチングできるような自由で公平でオープンな市場ができることによって競争が活性化しさらに成長することである。

   
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