2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年2月26日

 目下のところ、日本は冷静に紛争回避、リスク低減の諸措置を取ることに意欲的である。これに対し、中国は、日本が尖閣を係争地であると認めるまで、日本とは話し合いをしない構えを見せている。日本としては、いったんこれを係争地として認めれば、中国は必ずやこれを次の交渉に持ち込むだろう、と疑っている。

 南シナ海については、ASEAN諸国は強制力をもつ行動規範を作りたいと考えているが、中国は色々な障壁をつくり、それに応じていない。

 尖閣については、米国としては日本側に次のような考え方を提示するのが良いと思われる。日本の立場を二つに分けて処理するというものである。

 それは、「法律上(de jure)尖閣は日本のものであり、したがって紛争は存在しない。しかし、現実には(de facto)中国等が独自の主張をしていることを認め、他の交渉においてもそれを主張することを認める」とするものである。

 米国としては、同盟国や友邦国の名誉を守るのに、小さな岩礁や島のために戦争するということは、利益に合わない。米国が戦う必要があるならば、もっと重要な事柄をめぐってであろう。米国大統領が東アジアの緊張緩和と安定化のために果たし得ることは少なくないはずである、と論じています。

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 上記のように、R. ブッシュらは、東アジアにおいて、紛争を回避し、ないしは衝突のリスクを低減させるための信頼醸成措置の必要性について述べ、冷戦時代の米ソ間の措置を参考として、中国を入れた仕組みを新たに考えるべきである、と提言しています。この提言の総論部分――つまり、紛争回避と衝突のリスク低減のために何らかの措置を取る必要性があること――については大方の人々の異論のないところでしょう。


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