2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年2月26日

 1月17日付米Brookings研究所のウェブ・サイトに、Richard Bush米ブルッキングス研究所北東アジア政策研究センター所長、Bruce Jones同上席研究員及びJonathan Pollack同ジョン・ソーントン中国センター部長代行が連名で論説を載せ、冷戦時代に米ソ間で合意・実施された紛争回避、リスク低減の諸措置を、東アジアにおいても導入すべきであるとして、尖閣、南シナ海における具体的方策を提言しています。

 すなわち、東シナ海、南シナ海を含む東アジアの海洋はますます危機的状況になりつつある。その理由は、第1に、関係国それぞれが領土や資源をめぐる主張を強めつつあること、第2に、各国内にナショナリズムの圧力が強まりつつあるが、その危機管理を行う能力が弱いこと、である。米国にとっては、同盟国や友邦国が関係する対立・衝突に巻き込まれるリスクが強まりつつある。

 大統領への提言としては、短期的には、紛争回避のメカニズムを採用するように関係国に働きかけることであり、中期的にはより制度化されたリスク低減措置を関係国に奨励することである。冷戦期には、米ソ間で種々の合意を結び、艦船や空軍機の互いの行動を規制した。

 東シナ海と南シナ海で緊張が高まっている理由には、特に、中国が海上における軍事力を拡張しつつあることが挙げられる。その結果、すべての国々でナショナリズムが強まっており、指導者たちにとっては妥協の余地が少なくなってきた。

 米国はどの領土がいずれの国に属するかについては、その立場を明らかにしない。しかし、航行の自由を守ること、紛争の平和的解決をはかること、国際法を用いて主権や資源開発に対処すること、を基本方針としてきた。中国の最近の一方的主張や行動は、それらがたとえ非暴力的なものであっても、明らかに威圧的なものであり、米国の利益に反するものである。

 米国にとっては、条約上の義務から衝突に巻き込まれる危険性がある。日米安全保障条約は、尖閣を含む日本の施政下にある領土すべてに適用があり、米比相互防衛条約は、南シナ海の島嶼には適用がないが、フィリピンの船舶には適用がある。このような領土紛争の仲介をすることは徒労に終わるだけであり、それをする必要はない。

 第2期オバマ政権が行うべきは、まず、関係国に自粛を助言することであるが、その際には中国が自粛申し入れの主たる対象となろう。そして、冷戦期に米ソ間で行なったように、短期的には紛争回避、中期的にはより制度化されたリスク低減の諸措置をとるよう関係国に働きかけるべきである。


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