3月13日にパラリンピック(「国際残疾奥林匹克」)が閉幕した。2月4日から20日まで開催された冬季オリンピック(「奥林匹克」)と合わせて中国語で「双奥」と呼ぶ北京における〝オリンピックの季節〟が終わりを告げたことで、中国は今秋の第20回共産党全国大会(以下、第20回党大会)に向かって長い政治の季節に突き進むことになる。
閉会式中継に見えた習政権の意図
13日夜の閉会式に臨んだ国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長は、平和について力強いメッセージを発し、ロシア軍のウクライナ侵略への怒りを表明した。「平和の祭典」を掲げる国際的スポーツ機関の長としは真っ当な反応と言える。
だが中継を担当した中国国営中央電視台(CCTV)は、開会式における挨拶でもそうであったが、パーソンズ会長が言及した平和に関連する部分を中国語に訳すことはなかった。
国営メディアなればこそ、CCTV の報道姿勢には習近平政権の意向が反映されているはず。露プーチン大統領の一連の振る舞いに対し習政権は依然として明確な姿勢を示してはいないが、あるいは同大統領の真意を測りかねている。
戦場での戦闘の帰趨はもちろんのこと、戦争そのものの実相が明らかにされていない以上、現時点で旗色鮮明に振る舞うことは「国益」、あるいは習主席の「個益」を考えたうえでの得策ではないと判断したからだろう。そこには台湾、ウイグル、東シナ海、さらには一連の中国包囲の動きに対する〝利害打算〟が働いているはずだ。
だがロシア、ウクライナの両国とも遠く離れ、特段の利害関係の無い中小国における政府の対応としてならまだしも、「中華民族の偉大な復興」という壮大な国家戦略を掲げる政権としては、〝勝ち馬に乗ろう〟などといった類いの対応ではなく、むしろ自らの立ち位置を敢えて鮮明に打ち出し、実質の伴ったメッセージを明確に示した方が、国際社会に〝好印象〟を与えるのではないか。もちろん、そこに日本メディアで垂れ流される「正義」とか「道義」といった情緒過剰の判断基準を働かせる必要などあろうはずもないのだが。
ドサクサに紛れて「洞ヶ峠を決め込む」などといった対応は、やはり「中華民族の偉大な復興」には相応しくない。敢えて〝苦言〟を呈するなら、姑息に過ぎる。