2022年9月28日(水)

21世紀の安全保障論

2022年3月3日

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勝股秀通 (かつまた・ひでみち)

日本大学危機管理学部教授

1983年に読売新聞社入社。93年から防衛問題担当。民間人として初めて防衛大学校総合安全保障研究科(修士課程)修了。解説部長、編集委員などを経て、2016年4月から現職。

 「北大西洋条約機構(NATO)のさらなる拡大に反対する」――。北京オリンピック(五輪)開幕直前の2月4日、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が発した共同声明が、世界を闇に引きずり込む発火点となるかもしれない。

北京オリンピック開幕前に行われた中露首脳会談。中露結束を見せるものとなった(ロイター/アフロ)

 日米欧が外交団の派遣を取りやめる中、習主席は国家として五輪への参加が許されていないロシアのプーチン大統領を、国家元首の招待という特例によって「主賓」として迎え入れ、首脳会談に続き、開会式に居並ぶ姿を通して中露の蜜月ぶりを演出した。

 習主席と気脈を通じたプーチン大統領は、五輪が閉幕する20日まで自重し、翌21日、国際法を無視し、ウクライナ領内にある親露派2地域の「独立」を承認、軍事侵攻に踏み切った。本稿執筆の2月末時点で、ロシア軍はウクライナの首都キエフなどを攻撃し、傀儡政権の樹立を画策しているようにみえる。

 この間、中国はロシアのウクライナ侵攻を黙認するだけでなく、ロシアから膨大な量の天然ガスの追加供給を受けることで合意し、ロシア産小麦の輸入拡大も決めるなど、日米欧の対露経済制裁とは真逆に、ロシアを経済面から下支えしている。事ここに至って、世界は米国主導の秩序を支えてきた民主主義陣営と、力による現状変更を試みる中露の権威主義陣営とに分断されてしまったと言っていい。

 しかし、問題はそれだけでは済まされない。日本にとってウクライナ危機は、決して対岸の火事ではない。東アジア、とりわけ台湾海峡と沖縄・尖閣諸島をめぐる情勢に注視する必要がある。なぜなら、今回のウクライナ危機で特筆されるのは、ロシアが中国との首脳会談と共同声明を経て侵略に踏み切ったことに加え、侵略を正当化する演説の中で、プーチン大統領は「ロシアは世界で最も強力な核保有国の一つであり、多くの最新兵器で優位性を持つ」と述べ、核兵器を脅しの材料として使ったことだ。

 中露の結束強化と核戦力の誇示――。この悪夢に対し、日本はどのような戦略で臨む必要があるのか。それを示すことが本稿の目的である。

共同声明で示されたもう一つのメッセージ

 中露の共同声明は、NATOの拡大反対にとどまらず、日本の安全保障に重大な影響を及ぼす警告を発している。それは、昨年9月に発足した米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を批判し、米国によるアジアへの中距離ミサイルの配備に反対したことだ。

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