昨年秋から北朝鮮の超音速ミサイルの発射が続いている。一連の打ち上げを見ていると、迎撃を難しくする技術の開発を目指していることは明白である。極超音速ミサイルは、その典型的なものであるが、同時に一つの型のミサイルに絞ることなく、多くの種類のミサイルを同時開発していることも大きな特徴である。
現在米朝交渉は停滞しているが、その米国の気を引くためか、また、交渉に入るために多くのメニューを持っていることを示すためか、北朝鮮の行動はなかなかしたたかである。また、北京での冬季オリンピック期間中は中国への遠慮も必要になることから、閉幕後にまた動き出す恐れもある。
その時には、昨年1月に金正恩総書記が掲げた「国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画」に明示されている最優先5大課題、すなわち、①射程1万5000キロメートル(km)のICBMの開発、②新型SLBM(潜水艦発射型ミサイル)の試射、③ 軍事偵察人工衛星の打ち上げ、④核兵器の小型軽量化、⑤原子力潜水艦の保有に、順次手を付けてくることが考えられ。北朝鮮のミサイルには、原爆が載せられる可能性があることを認識して対応する必要がある。
北朝鮮の開発能力が「この5年間で急速かつさまざまな開発が進んでいる」ことから、すでに日本全体をカバーするミサイルも存在している。日本は十分に警戒をしなければならない。
主な標的は日本および在日米軍基地
北朝鮮による昨今のミサイルに関連した動きをまとめると、以下のようになる。
2021年9月13日付の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、国防科学院が9月11日と12日の2日間に、新開発した長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと写真入りで報じた。弾道ミサイルでなく、巡航ミサイルであることが注目された。
記事ではミサイルが発射台付きの車両から発射される瞬間や、上空を飛行する様子も掲載されていて、発射後は地上と海上に設定した軌道に沿って2時間6分20秒飛行し、1500km離れた標的に命中したとしている。
NHKの番組に出演した軍事アナリストで東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠特任助教は、今回の巡航ミサイルについて「韓国を攻撃するのであれば500kmから800kmあれば十分。北朝鮮から1500kmというと朝鮮半島以外が目標となる。わざわざロシアや中国向けに開発したわけではないと考えると、主な標的は日本、特に日本にあるアメリカ軍基地などになるのではないか」と分析していた。
読売新聞も社説で、巡航ミサイルの発射自体は安保理決議の対象に含まれず、「抜け穴」になっていた。「政府は米韓両国と連携して分析を進め、新たな脅威に対処できる態勢を構築しなければならない」と報道した。