2024年4月26日(金)

21世紀の安全保障論

2022年2月22日

新年早々、ミサイルを続々発射

 北朝鮮によるミサイル発射は、年明け22年早々から行われる。しかも、日本にとって厄介な極超音速ミサイルから始まる。

 朝鮮中央通信は、国防科学院が22年1月5日、極超音速ミサイルの試験発射を実施したと報じた。同通信は「初期の発射方位角から側面機動(移動)し、700km先に設定された標的に誤差なく命中した」と報じ、「極超音速滑空飛行弾頭部の制御性と安定性がはっきり誇示された」と成果を強調した。さらに「発射後に分離し、極超音速滑空飛行戦闘部の飛行区間で、初期発射方位角から目標方位角へ120kmを側面機動し、700km先に設定された標的に誤差なく命中した」と明らかにした。

 北朝鮮が極超音速ミサイルの発射実験に乗り出したのは、先述した昨年9月28日の「火星8型」に続き2度目だ。北朝鮮は「国防力の強化基調によるもの」だと説明しているが、高度化した兵器実験が朝鮮半島の緊張を高めるという懸念の声もあがっている。

 前回は、飛距離は200kmに届かず、最大高度は30km以下、速度はマッハ3という数字が韓国側から観測されている。ただ、2回目に発射したミサイルについて、韓国軍当局は極超音速ミサイルの速度をマッハ5以上と推定。極超音速ミサイルの基本要件は満たしている。

 「火星8型」の弾頭部はシャープなグライダーの形をしているが、今回は円錐形。前回の発射実験で極超音速の速度が出なかったことを受け、弾頭部の形を円錐に変え、マッハ5以上の速度を出そうとしたものとみられる。

 1回目と2回目の極超音速ミサイルは、弾頭部分が全く別物で、むしろ数値が改善した2回目のミサイルの方が技術的には古く退化した代物である。つまり「技術的に手堅く失敗し難い設計を試した」という評価の方が正しい。

金正恩による発射実験視察が意味するのは

 北朝鮮国営メディアの労働新聞が1月12日に、11日に極超音速ミサイルの発射実験を行い、連続成功したと発表した。労働新聞の1面には、金正恩総書記がミサイル発射実験の現場を視察した写真が掲載されている。

 正恩氏によるミサイル発射実験の視察が報じられたのは20年3月以来、約1年10カ月ぶり。妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長も初めて発射実験の視察に同行し、正恩氏の国政運営全般を補佐する右腕であることを誇示した。

 試射の目的については、「開発された極超音速兵器システムの全般的な技術的特性を最終的に確証するためだった」と説明。開発が最終段階にあると強調した。ミサイルは発射後、分離した弾頭部が600km先で再び跳躍。最初に発射された方角から目標の方角へ240km旋回しながら動き、最終的に1000km先に設定された標的に命中したという。同通信は「弾頭部の優れた機動能力がさらに実証された」としている。

 朝鮮中央テレビは12日夜、新たな写真を公開し、金正恩総書記が、前のめりになり、ミサイルの打ち上げを見ている姿やミサイルを移動式の発射台から打ち上げる準備をしている様子を報じた。また、発射実験を行った「極超音速ミサイル」が1000km先の標的に命中したとしていて、今回の発射を「最終試験」としている。

金正恩総書記がミサイル発射実験を視察する映像(AP/アフロ)

 韓国メディアは、金総書記が立ち会ったことは、極超音速ミサイルの開発が最終的に成功したことを示しているとして、まもなく実戦配備されるだろうと伝えている。その意気込みは、1月12日付「労働新聞HP」の文章からも読み取れる。そこには、「試験打ち上げは、開発された極超音速兵器システムの全体的な技術的特性を最終的に確認することを目的として行われました」、「この日、金総書記は極超音速兵器研究開発部の主要メンバーを中央委員会本部に呼び出し、彼らが国の戦争抑止力を強化し、ハイテクな国防科学の成果を続けてわが国の主権と安全を確保するという大きな期待と自信を表明し、熱く祝福した」と書かれている。

 米国は、12日(現地時間)、北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射を受け、追加制裁を科した。

 北朝鮮は制裁に反発する形で14日、弾道ミサイルの可能性があるものを発射した。北朝鮮メディアは翌15日、「鉄道機動ミサイル連隊」による射撃訓練だったと報じた。朝鮮中央通信は発射の瞬間の画像を公開し、訓練は、同連隊の戦闘準備態勢の点検と任務遂行能力向上が目的で、14日午前、総参謀部から不意に出された命令で実行したとした。今後全国的に同連隊の運用体系を作り、鉄道ミサイル戦術をより洗練させるとしている。

 北朝鮮外務省は14日、朝鮮中央通信を通じて報道官談話を発表し、北朝鮮のミサイル発射に対し米国が制裁強化を発表したことに反発し、「米国がこうした対決的な姿勢を取り続けるなら、われわれは一層強力、かつ、はっきりと反応せざるを得ない」と警告するとともに、「米行政府が外交と対話を口にしながら、実地においては対朝鮮孤立圧殺政策にしがみついていることを示す」と非難した。また同時に、「国家防衛力の強化は主権国家の合法的な権利」とし、北朝鮮の新型兵器開発は「国家防衛力を現代化するための活動であり、特定の国や勢力を狙ったものではなく、これにより周辺国の安全に危害を及ぼしたことも全くない」と主張している。


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