2022年12月5日(月)

21世紀の安全保障論

2022年3月3日

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勝股秀通 (かつまた・ひでみち)

日本大学危機管理学部教授

1983年に読売新聞社入社。93年から防衛問題担当。民間人として初めて防衛大学校総合安全保障研究科(修士課程)修了。解説部長、編集委員などを経て、2016年4月から現職。

 迎撃に依存する今の戦略では国家国民を守れなくなった以上、日本は中国と北朝鮮に対し、「貴国がミサイルを発射すれば、確実に反撃し、大きな損害を与える」という抑止力をどのように整備し、運用するのかが新戦略にとって最大のカギとなる。その名称は「敵基地攻撃力」が紛らわしいというのであれば、「ミサイル阻止力」でいいだろう。

日本の選択肢とは

 もう一つの焦点は核抑止だ。ウクライナ危機でプーチン大統領が核戦力を誇示し、核戦力運用部隊に対し、任務遂行のための高度な警戒態勢に入るよう命じたことが報じられている。核保有国が非核保有国に対し、核で威嚇するという言語道断の事態だが、日本はロシアと中国、そして北朝鮮という核武装国と向き合い続けなければならない。しかも、日本の軍事力でこれら核武装国を抑止できない以上、この深刻で破滅的な危機に対し、唯一の選択肢は、米国による拡大抑止、いわゆる〝核の傘〟の信頼性を高めることしかない。

 そのためには、先に「ミサイル阻止力」と記した攻撃力を日本が保有し、自分の国は自分で守るという意思と能力を明確にする必要がある。それが米国を繋ぎ留めておく手立てだと思うからだ。同時に、豪州への原潜建造支援でスタートするAUKUSは、今後、インド太平洋地域における核抑止の一翼を担うことは確実であり、新たな米国の核抑止戦略の中で、日本が担える役割について米国とひざ詰めで協議する必要がある。

 米国にとっても「0対1250」という圧倒的に優位な中国の中距離ミサイルの存在は深刻な脅威だ。しかも30年には、中国が保有する核弾頭は、現在の倍以上の500発前後に達すると、米国防総省は見積もっており、日米で取り組むべき課題は山積している。

 唯一の被爆国として核廃絶という理想を求めることは大切だが、圧倒的な核武装国を前に、日本が〝核の傘〟に依存し続けているという現実も忘れてはならない。それがウクライナ危機と中露の結束強化で浮かび上がった悪夢を回避する処方箋だと確信する。実行できるか否かは、激変する安全保障環境について、政府が国民に丁寧に説明し、理解を得られるかにかかっている。そのための時間は、そう多くは残されていないことも付記しておきたい。

  
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