2024年11月25日(月)

田部康喜のTV読本

2013年2月27日

 いまさら、ヒッチコックを持ち出すまでもないが。「北北西に進路を取れ」は、広告会社の社長役のケイリ―・グラントが打ち合わせに入ったホテルで、ベルボーイが名前を読んだ人物とスパイ組織に間違われる。無実の殺人犯として警察に追われる身となる。そして謎の美女エバ・マリー・セイントとのラブストーリーとなる。その果てに彼女との結婚という幕切れが訪れる。

 「書店員」のドラマの展開は、1話ごとにミチルの運命が暗黒に包まれていく。

 ミチルが当たりくじかどうか確認した宝くじは、勤務する書店の同僚から頼まれて買ったものである。冒頭のシーンは働いている長崎の町ではなく、東京である。

 宝くじを買った直後に、不倫関係にある東京の大手出版社の社員、豊増(新井浩文)が帰京するのに、気まぐれについていってしまったのである。

 長崎の実家と勤務先に、嘘に嘘をかさねるうちに、会社も首になって東京に住むことになる。

ついに殺人事件まで

 そして、第1の殺人が起きる。ミチルは同じ町出身で弟のようにかわいがっていた、東京の大学生である竹井(高良健吾)を頼る。新たに借りたアパートの一室で惨劇は起きる。 

 結婚を約束した地元の宝飾店の跡継ぎの久太郎(柄本佑)が訪ねてきたとき、たまたま部屋にいた竹井を慕う女子大生の高倉(寺島咲)が、けんかの末にミチルともみあう久太郎をフライパンで殴り殺してしまう。

 竹井と高倉は、冷静に布でくるんで、竹井のアルバイト先の料理学校の車で、久太郎の死体を捨てにいくのである。

 第2の殺人はそのように直裁的な描写は避ける。ミチルの不倫相手である豊増が、会社の使い込みがバレて追いつめられる。穴埋めのために、ミチルが宝くじの当選金のなかから500万円を用立てて、自分の部屋に置き、翌日にはなくなっている。

 殺人は、部屋に入るミチルを尾行するようにゆっくりと走る、竹井のアルバイト先の車によって暗示される。


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