2024年12月15日(日)

田部康喜のTV読本

2013年2月27日

 サスペンスの謎解きは、幕が下りる瞬間にすべての出来事が、すーっと1本の線で結ばれる。まるで幾何学の補助線を引いて問題が解けるかのように。

 NHKよる☆ドラ(火曜日夜)の「書店員ミチルの身の上話」は、連続10回の最終回にあたる3月12日放映に向けてドラマはクライマックスを迎えようとしている。

 このコラムのシリーズは、ドラマを紹介するにあたって、初回あるいは第2回からうかがえるストーリーと俳優について批評してきた。

 今回はちょっと趣向を変えてみよう。「書店員」は第7回までみた。回を重ねるごとに、このドラマは緊張感が高まって、最後の謎解きがどうなるのか、その展開に引き込まれているからである。

宝くじ1等2億円当選で暗黒に包まれる運命

 戸田恵梨香が演じる書店員のミチルが、街角の小さな宝くじボックスでバッグから取り出した宝くじが当たっているかどうか、読み取り機で調べてもらうシーンから、ドラマは始まる。

 売り場の中年の女性(田島令子)が驚きの表情を浮かべる。

 「お嬢さん、1等の2億円です」

 ドラマのタイトルバックに戸田恵梨香の上半身が流れるように映し出されて、語りが入る。ミチルが長崎の小さな町の書店員であることを告げ、宝くじに当たったことが彼女の人生を暗転させることが予言される。

 語りの主は、ミチルを妻と呼ぶ。第7回に至るまで、ミチルは独身であり、しかも「妻」と呼ぶ夫役は登場していない。この夫はいまのところ声だけで、配役は大森南朋である。

ヒッチコックを持ち出すまでもないが……

 よる☆ドラは、1回が30分である。タイトルバックと次回の予約、そして前回の要約部分を除けば20分のドラマの展開である。全10回であるから、長めの映画1本分といえるだろう。

 普通の日常を生きる人物が、ある出来事を契機に不条理ともいえる事件に巻きまれていく。それがサスペンスの醍醐味ではないか。


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