2024年4月24日(水)

新しい原点回帰

2022年4月11日

 もともと福田さんは経済学部の卒業。理科系とはまったく縁がなかったが、「事業にもっとITを取り入れなければダメだ」と痛感した。

 「必要だと思ったら嫌なことでもできてしまうのが自分の強みなんです」と、福田さんは笑う。大学卒業後、国内メーカーや外資系で営業職を務め、「そろそろ戻ってこい」と父から言われて入った東港金属ではいきなり営業をやれと言われた。大口の顧客に逃げられ、その分の穴埋めをしろ、という命令だった。

 スクーターを買うと飛び込み営業を始める。1週間で50軒ほどを回ると4軒の客が取れた。「飛び込み営業なんて、何百軒回って1軒取れるかどうか。それがあっという間に4軒取れた。この業界はあまり営業をする慣習がなく、お客さんは廃棄物処理に悩んでいたんです」。まだまだ成長する余地が大きいと感じたのだ。その経験がのちに、事業を積極拡大していくベースになった。もちろん、環境意識の高まりや、SDGs(持続可能な開発目標)の広がりなども追い風になった。

メルカリのサービスこそ
自分たちがやるべき

 話を戻そう。ITの必要性を感じた福田さんは18年5月に子会社「トライシクル」を設立する。インターネットを通じたリサイクル・サービスの開発を行うIT会社だ。

サイクラーズ 年表

 そのとき考えたライバルは、メルカリ。メルカリがやっているサービスは本来、リサイクル業者である自分たちがやらなきゃいけない事業だと感じた。まずはメルカリのようなマッチング・システムを作ろうと考えたのだ。ちなみに社名をカタカナの今風にしたのは、ソフト開発ができる若者を採用する上でのブランド・イメージを考えたためだ。

 2019年に誕生したのがアプリ「ReSACO(リサコ)」。企業が使わなくなったモノを最適な方法と価格で売り、それを必要とする企業が買えるマッチング機能がウリで、資源リサイクルの世界初の「B2B、サーキュラーエコノミー(循環型経済)対応プラットフォームアプリ」になることを目指した。

 当初スタートさせたアプリはまさしくメルカリ型の1対1のマッチングアプリだった。不用品を必要とするところにリサイクルする仕組みだ。ところが、サービスがスタートしてもユーザーがまったく増えなかった。なぜか。

 客に聞いたところ、大量に処分したいモノを抱える法人客にとって、1対1のマッチングは手間ひまがかかりすぎるため、ニーズがなかったのだ。

 そこで福田さんはモデルを一気に変えることを即断する。法人向けの「無料回収サービス」や「不用品まるっとおまかせサービス」など法人の需要に合わせた仕組みに変えたのだ。これで一気に集荷量が増えた。リサイクルさせるためには、じっくり販売していかなければならない。その際、富津の広い土地が役立った。19年11月にリサイクルセンターを稼働させた。

東港金属の千葉工場に隣接する2万3000坪におよぶ「ReSACOリサイクルセンター」。2019年11月に完成した。回収された不用品をここに集め、仕分け、保管することで、リユース・リペア・リメイク・アップサイクル・部品取りなどを行っていく。

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