フィナンシャル・タイムズ紙のキャサリン・ヒル中華圏特派員が、3月29日付け同紙の解説記事‘Taiwan’s leader to emulate Zelensky in case of China conflict’において、ロシアのウクライナ侵攻に対するウクライナ人の抵抗ぶりは、台湾の人たちに、自らの領土、主権を如何に守るかを教える効果をもつものになった、と述べている。目下、台湾の人たちは、ウクライナの状況をわがことのように注視している、とする同論評は、台湾の現状についての的を射た内容になっていると思われる。
同記事によれば、台湾の人たちの中には、もし中国が将来台湾へ軍事侵攻することがあれば、自分たちのリーダーはウクライナのゼレンスキー大統領に学ぶ必要がある、とまで言う人たちがいるという。ゼレンスキーは「逃げ隠れ」することなく、ウクライナにとどまり続け、国民を鼓舞し、同時に世界に訴えかけている。
首都キーウからの国民に対するビデオメッセージやオンラインでの外国政府への呼びかけは、ロシアの侵略を弱体化させる効果を持っている。現在の台湾の防衛計画では、中国による侵攻が始まった場合には、「斬首」作戦から逃れるため、政権と軍の指導者は退避することになっているらしいが、今般のゼレンスキーの言動に見習って、それを改めるべきだという動きがあるようだ。
中国は、台湾は中国の不可分の一部であるとして台湾統一を「核心的利益」の最右翼に位置付け、そのために力の行使を排除することがない、という構えを崩していない。最近のウクライナ情勢が中国の言う「台湾統一」を早めることになるのか、遅らせることになるのか、目下進行中のロシアのウクライナへの侵略行為の帰趨にも大きく影響されるだろう。
台湾人の間においても色々な見方はあるが、中国の台湾への攻撃の一つとして挙げられるものに、台湾の政治的・軍事的リーダーを狙った「斬首作戦」や金門・馬祖のような離島を攻撃する「離島作戦」が挙げられることが多い。実際に、人民解放軍は、内蒙古に台湾総統府に似たレプリカの建造物を作り、そこで軍事訓練を行っていることはよく知られている。