3月16日付のロイター通信が、台湾が馬祖列島の東引島で実弾演習を最近実施したことを取り上げ、その背景と東引島の戦略的意味を解説する記事を出している。
3月16日、台湾国防当局は、台湾の最北端に位置する離島・東引島(Dong In Dao)で軍事演習を行ったことを公表した。台湾国防省は、台湾対岸の福州沖にある金門島、馬祖島に近接した東引島での演習は「通常業務」であったと述べている。
この演習は、ロシアのウクライナ侵略後に中国がロシアと同様の動きをすることを警戒して、台湾国防当局が行った軍事演習であったにちがいない、とロイターの解説記事は述べているが、その通りだろうと思われる。
ウクライナへのロシアの侵略が、中国の言う「一つの中国」の原則に如何なる影響を及ぼすことになるのか予断しがたい面はあるが、今回の軍事演習は蔡英文政権下において中国解放軍に対する警戒心が強まりつつあることの具体的現れの一つとみるべきだろう。
金門島、馬祖島はもともと、第二次大戦後、国民党政府軍が大陸を追われ、台湾に亡命政権をつくった頃より、台湾政府が全島を要塞化してきた島嶼である。なかでも東引島は馬祖島列島の北部に位置し、対岸の福州に近く、1950年代から台湾防衛の最前線に当たってきた。
東引島の軍隊は台湾の自作の対艦ミサイル(Hsiung Feng〈雄風〉II)、地対空ミサイル(Sky Bow〈天弓〉II)を装備しており、「最も戦略的に重要な」離島になっている、という。約1500人の一般市民が住むこの島は、中国が台湾を攻撃する場合、東部の浙江省から南に向かう中国軍にとって、重要な通路に当たる。
中国の人民解放軍が台湾を攻撃する場合、「東引のミサイル基地は最初の標的の一つになるだろう」というのが、台湾の軍事専門家の見方であるという。「この島は台湾海峡北部の支配の鍵」と言われる所以だ。